「アデイ元老院」のみなさんが、日本のLGBTを取り巻くアレコレについて無責任に論評する「うんどう批評」第1弾! 今回は、ネット上で騒動を巻き起こした「ゲ◎エリット」問題を肴に議論をすることに。弥生、文子、五月、葉子、長子、キミの、年齢も職業もジェンダーもセクシュアリティも X な5人による異論、暴論の井戸端会議!

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うんどう批評1「東部戦線異状あり! ゲイ・エリート問題!!」

 

キミ:実は、「ゲ◎エリット」問題って、巷では盛り上がっていないんだよね。

弥生:そうそう!

葉子:ふだんTwitterをやってないから、今回、改めて調べてみたら、最初の1、2日目くらいは盛り上がっていたけど、すぐに盛り下がっていき、その後はほとんどつぶやいている人はいない。

弥生:一部の人だけが盛り上がっていたみたいな。

キミ:そうなのよ。“いつもの人たち”が“いつもどおりに”騒いでいるっていうだけでね。

文子:“いつもの人たち”っていうのは?

キミ:そりゃ、M将軍とかT将軍とか(笑い)。

長子尼将軍のS女史とか(笑い)。

文子:将軍って…!?

キミ将軍はギョーカイですでに一定以上の地位があるのに、好戦的で常に一番槍で打って出る人。

文子:そ、そうなんだ…(汗)。

キミ:だいたい、この話題ってまとめサイトにもなっていないよね。

弥生:そうそう、探したけどなかった。

葉子:一般的には、すでに消費されて終わっちゃった気がする。一部の人はまだこだわってるかもしれないけど。

五月:「カラ◎ルステーション問題」の時は、まとめサイトになってたでしょ? それに比べると、今回は誰もトゥギャらなかった。

葉子:「ゲ◎エリット」には、あのH将軍すら反応してないくらいだからねえ。

キミ:(笑い)H将軍がスルーとなると、それは盛り上がってないよね。「カラ◎ル」の場合は、渋谷区とか政治が絡んでいたから火がついたのかもしれない。

五月:でも、問題の根底にあるのは「カラ◎ル」からずっと続いてる、広告代理店的な手法に対する違和感。そういうツッコミが定期的に巻き起こってる感じかな。半年前に博◎堂の「エグゼクティブ・◎イ」が騒ぎになっていたけど、同種の原動力による炎上騒ぎなのかなって。だから今後も必ず、半年に一回くらいこういうことは起こるはず。

弥生:ってことは、G司令が企画に関わっているから炎上したってことなの?

五月:『◎UT IN JAPAN』はLGBTなら誰でも輝ける、誰もが平等みたいな建前があるのに、あの写真が資本主義社会で力がある人を集めて、LGBTにおける経済格差を露にしてしまったことに、みんな嫌悪感を示したのではないかしら。

葉子:最初の1、2日で盛り上がった反応には2パターンある。ひとつは、言葉と写真だけがネット上で拡散されてしまった結果、「俺は社会のエリートだぜ、自撮り!」みたいな自慢として受け止められてしまった。もうひとつは、トランスとかビアンとか活動家系のゲイの人たちは、「なんでお金儲けをしている一部のゲイだけをピックアップするんだ!」という批判。

キミ:しかもスーツ属性だけ。

長子:後者は、ネオリベとか女性差別的なフレームで捉えようとしたんだよね。あと、よくあるゲイ中心主義批判。

葉子:リブ活動と捉えた上でポリコレ批判してる人たちと、リブ活動とは捉えていなくて、ただのナルシストたちの自己顕示みたいな点で叩いている人がいる、その分裂が面白いなって思った。

五月:そう、今回は戦線が二つあって、東部戦線はポリコレ棒でバンバン叩く方々。西部戦線は恐らく、去年の「シャイニー問題」の流れで「ドヤ顔自撮り、ウザッ」みたいな揶揄。

文子:ビアンがみんな東部戦線、ポリコレ派っていうのはちょっと違う。でも、ふだん仕事場で、おっさんたちの横暴にウンザリしているから、ああいう権威主義的なものを見せつけられると、条件反射的に不愉快な気持ちになる。生理的な問題なのよ、もう。

葉子:あと、「ブスのくせに、今度はエリート企業勤めですか?」みたいな批判もネットに出てて笑った。本来ブスとかは関係ないのにね。

五月:そう、「イケメンが一人もいない」とか、「外側に行くにつれてブサイクになっていくグラデーション」とか、そういうことで叩いている人は、ポリコレ棒で批判している人たちとはまた別の動機があるんだと思います。

葉子:あの写真を公表した側からしたら、社会的に成功したゲイがカムアウトすることに意味があるはずだったのに、まさかそこで「こんなブスが偉そうに自撮りを」とか言われるなんて!!って感じだよね。

弥生:公開の翌日くらいにはもう、「ガチムチのほうがゲイエリート」っていう主旨の画像が流布されたくらいだから(笑い)。

長子:私は『◎UT IN JAPAN』の理念に賛同する。だって、実際、いままで大企業に勤めているゲイのカミングアウトなんてなかったでしょ。ふつうに出世するゲイもいることがわかれば、やっぱ、当事者の子どもたちは勇気づけられるもの。足を引っ張るより、行動している人たちには、とりあえず、拍手を贈ろうよ。

 

モテか、金か?

キミ:でも西部戦線の言っていることもけっこう重要で、あの写真に写っている人たちは、あくまでも「エリートゲイ」であって、「ゲイエリート」ではないんだよね。

五月:あぁ、「ゲイエリート・エリートゲイ問題」ね。

葉子:その違いは?

キミ:ゲイっていう括りで何かを語るっていうのは、同性にモテるかどうかとか…セクシュアルな部分に特化するってことじゃない? だって、一般のノンケとゲイの違いなんてそれ以外にはないんだから。だから、そこでエリートっていうなら、絶対にブスじゃダメなわけですよ。

長子えー、でも自分、イケてる人もけっこういたよ! 彼らとの乱パなら参加したいもの、スーツ乱パ(笑い)。あと、ゲイだからっていつもセクシュアルな軸で見る必要はないんじゃないの。

葉子:じゃあ、キミさん、アレが「ゲ◎エリット」っていうコピーじゃなかったら、炎上してなかったと思う?

キミ:そりゃ、「エリートゲイ」っていうコピーでも炎上はすると思うけど。

葉子:自分は別の方向性でも炎上すると思う。言葉の使い方もあるけどね。

五月:あの写真を見たときに、格差のヒエラルキーをモテの軸として見る人たちと、お給料や社会的ステイタスという軸で見る人たちの二つの塊が存在している、っていうことが興味深い。

キミ:身も蓋もない言い方(笑い)

葉子:同じものを見ていてもどこを一番強く捉えるかによって、人それぞれのリアリティが違うんだよね。

弥生:でもさ、年収とかを軸にして炎上することなんて、昔はなかったよねー。

五月:そうそう、モテの軸っていうのは太古の昔からあったけど、それはみんな受け入れていた軸だった。そういうヒエラルキーはアゲハなんかにも歴然と存在しているじゃない。だから、「ブスに再配分しろ」なんて誰も言ってないわけですよ! この社会はブスが差別されるのはみんな認めているの。誰かみたいにブスがハッテン場から入場拒否されたとしても、諦めざるを得ない。

長子:いや、アノ女は諦めなかったでしょ(笑い)。前髪切ったもの!

五月:だから、どんなブスだって、ハッテン場のコンセプトに合うように努力して自分のほうが合わせる(笑い)。それが、例えば、「年収が低いからハッテン場に入れません!」って言われたら大変な問題になるわけですよ。要するに、今回の「ゲ◎エリット問題」は、社会的地位という軸が新たに登場してきたことで生じたザワメキ。

葉子:でも、 SNSとかで、モテそうなガチムチとかが「イイネ」欲しさに自己顕示欲がダダ漏れになっている様を叩く人もいるわけじゃないですか。「モテるからって、ちょっと感じ悪りぃ」みたいにさ。だから、今回の標的はたまたま収入的に高い人たちだったけど、何をやっても、目立てば叩かれるんじゃないかって思う。

文子:なるほど、社会的な格差でも、モテ格差でも、ほんとのところ何でもいいってことか。

葉子だから、もう低年収で、ビックリするくらいブスの、最底辺の人間が写真をアップでもしないかぎり、誰が何をやってもどこかしらに格差を見いだされて、叩かれると思うんだよね。

 

気持ち悪さも多様性!?

gay-eliteキミ:でもそんな写真、絶対にレス◎ー・キーは撮らないよね。

全員:(笑い)

文子:じゃあ、レス◎ー・キーが撮らない人々が最底辺なの!?

五月:そう。だからダイバーシティや左翼系のLGBTの人たちと、レス◎ー・キーの作家性みたいなものって根本的には相容れないわけですよ。

長子:うそよ、レス◎ー・キーが裸にしてきた男のなかにも、貧乏人はいっぱいいたはず! 体がよくって高収入の男なんてそうそういないもん。

キミ私は疑問がひとつあるんだけど、レス◎ー・キーってさ……そもそも才能あるの?

文子:私はけっこう好きだし、センスあると思う。ユー◎ンの写真とかもよかったもの。こちらから 『◎UT IN JAPAN』に応募する勇気はなかったけどね。

キミ:いや、私に言わせれば、◎川実花と一緒で、レス◎ー・キーって、何を撮ってもレス◎ー・キーなのよ。女優を撮ろうと一般人を撮ろうと、ベクトルはみんな一緒でしょ。

葉子:わかる、わかる。

キミ:しかも今回の『◎UT IN JAPAN』のだってさ、何千人も撮らなくちゃいけなくて、面倒くさいからセピア色なんだろうけど(笑い)、その上、みんなG◎Pの服で固められてるし……

文子:セピア色にもメッセージがあると思うよ。自分は展示を観に行ってマジ感動した。そういう人はいっぱいいる。あんたたち、悪口ばっかり言い過ぎなんじゃない?

葉子:それに、G◎Pはタイアップだからしょうがないよね。

キミでも、◎橋さんだけは全部自腹よ!

文子:え、そうなの!?

キミ:だってG◎Pには和装はないでしょ。

長子:新しいシリーズなんじゃない。

キミ:もし自腹だとしたら、そういうところに抜け道があるっていうのもどうよ。ともかく、多様性っていう建前があるにも関わらず、撮ると全部が同じに見えちゃうレス◎ー・キーを持ってくるところからして、もうチョイスの問題がねえ。

葉子:じゃあ誰がカメラマンだったら良かったと思う?

キミ:てめぇらで勝手に撮りゃいいのよ!

葉子:でも、みんなが自撮りとかして並べてもよっぽどなんか……

キミ:よけい気持ち悪いものが出来ると思うよ、そっちの方が。

葉子:たしかに気持ち悪いね(笑い)。

弥生:絶対、一般には受けないよね。

文子:カミングアウトの感動も与えられない。

キミ:でも、その気持ち悪さも含めての多様性じゃない!

全員:(笑い)

葉子:だったら、アデイでやろう。みんなで自撮りを撮って壁に貼る。その方が脱色されていない生身のドロドロしたものがいっぱい出るよね。どわーっと!

長子:『◎UT IN A DAY』じゃ、希望どころか絶望しか与えられないじゃない!!

 

みんな同じ穴の狢?

文子:弥生さん、あなたはあの写真を見てどう思ったの?

弥生:自分的には「イケてるタイプがいない…」としか思わなくて。ほんとに、ごめんなさい。

五月:じゃあ、西部戦線派なんだ。

弥生:そう、あの写真は「ゲ◎エリット」ってタイトルが入る前から知ってたけど、「あぁ、今度はこういうのやるんだ」くらいにしか思わなかった。まあ、自分も『◎UT IN JAPAN』に出てたからね。

文子:あなた、出てたの!? すごいじゃない!

弥生:そうそう。でも今回の騒動のとき、自分の周囲はリブ活動をしている人が少なかったりするのもあって、「べつに、なに?」みたいな冷静な反応だったよ。

葉子:それは叩いてるわけじゃなくて?

弥生:うん、叩いているわけじゃなくて、みんな、イケるイケないっていうところで見るくらいかなあ。

長子みんな自分のブスを棚に上げて、よく他人のことをイケてないとか…(笑い)。でも、実際、大半のLGBT当事者は「ゲ◎エリット」騒動には関心なんてないでしょ。弥生さんは東部戦線の、ポリコレ的な批判には違和感がある?

弥生:そこまで言うんだあー、って驚いた。

文子:東部戦線に関してはみなさんはどう思うのかしら?

五月M将軍とか、N将軍とかね(笑い)。

キミ:今回、M将軍はいつもに比べると温いなあーって感じだけど。

葉子:でもあの人、なんだって文句言うでしょ。あれ足りない、これ足りないって。

キミ:そうそう。定型文かよ!って感じで必ず批判するよね。

五月:M将軍は、L、G、B、Tそれぞれの差異がぞんざいに扱われることに対して警鐘を鳴らしている、っていうのが私の認識です。

キミ:まぁ、あの方の言ってることはごもっともかもしれないけど…。

長子:話を戻すけど、経済的に成功した人たちが同じ写真に収まっちゃいけないの?

キミ:写真の部分に関しては私はどうでも良いんだけど、あの人たちって一流企業の連中でしょ? いちばん会社を辞めさせづらい人たちじゃない。そんなところに属しておきながらこれまで顔も出さなかったくせに、突然「ゲ◎エリットでーっす!」って言う厚かましさってなんだろうってところよ。

文子:そ、そうなんだ……(汗)。

キミ「なんだい、こちとら20年間丸出しでやってんだよ!」って。

文子:あー、キミさんからすると、昨日今日のぽっと出のくせに、ってことね(笑い)。同世代だからよけいにそう思うのかしら。

五月:『◎UT IN JAPAN』というか◎ッドさんは、今回の件で、ほんとは性的マイノリティの連帯になんて関心がないにも関わらず、LGBTって言葉を道具的に利用しているだけじゃないか、って疑惑を持たれちゃったのかもね。

弥生:あの団体ってグローバルな流れに乗っかろうみたいな感じでしょ?

葉子:「リブとかいいながら、けっこう排除してるじゃないか!」みたいな批判ね。

長子:でもさあ、ここ数年の状況を牽引してきたのはG司令たちだからねえ。左派の将軍や文官たちが批判ばかりに終始して現実をたいして動かせなかったところに出てきたのが、“電◎革命”じゃない。それで大きく世の中が動いた。そのことは評価してもしすぎることはないんじゃないの。

文子:右に同じ。経済階層の高い男ばかり集めてけしからん!という批判が多かったけど、『◎UT IN JAPAN』全体では、いろんなマイノリティがいろんなコンセプトでカミングアウトしているんだから、多様性は担保されている。でも、個人的には、あの写真はあまり愉快ではないけど。

五月:ところで、◎田尚樹さんへのインタビューで、伏◎さんが「◎る気あり美はLGBTっていう言葉をどう捉えてるの?」って聞いていたのは、どんな意図があったのかな?

全員:(笑い)

五月:そういう意味では、◎る気あり美さんもお笑いっていうネタでうまーく包んでいるけど、◎ッドさんと同様の批判をされる可能性を孕んでるのではないかしら。まぁ、危険性を孕みつつ、みんなうまくやってるんですよ。

弥生:ただ、◎ッドさんって地雷を察知する力が弱いよね。こういうことをやると地雷を踏むっていうことをあんまり考えていないのかしら?

キミ厚かましいからよ!

葉子:自分の感覚からすると、どんな活動の仕方でも、どこかで切り取らなくちゃいけないじゃないですか。だって、ゲイ、ビアン、バイセクシュアル、トランス…って、すべての性的マイノリティを包摂して、すべての経済階層を網羅して…なんて、無理だもん。ある程度、切り取って、得意な人が得意な分野でやっていくしかない。だから、「ゲ◎エリット」みたいな切り口も、それはそれでいいと思う。だから、今回の騒動はどっちかっていうと、受け取る側が被害妄想気味なんじゃないかって。こんなことをネットで書いたら炎上しちゃうからしないんですけど。

五月:でも、「みんながそれぞれの場で頑張っていけばいいんじゃない」っていう発想って、ともすると能力のあるものは勝ち残って、ないものはバイバイ、っていうことになりかねない。

長子:新自由主義的な?

五月:そうそう。平等を重視の人たちからすると、「ゲ◎エリット」みたいのは、自分たちの基盤が崩れるみたいな怖さを感じるんじゃないかなって思う。だから本能的にそういうものを「危険だ!」って叩くんじゃない?

葉子:でも、ネット時代なんだからさー、「ゲ◎エリット」を見て、こんなのは違うって思うんだったら「ブスエリート」でもなんでもやればいい。

長子:例えば、「デブエリート」だったらサカゼンとタイアップするとか?(笑い)

キミサカゼンが買えるデブは裕福なデブよ! 高いんだからぁ。

葉子じゃあ、しまむらとかでいいじゃん!

キミ:そう、庶民のデブはしまむらよ。

葉子:何かが出てきたときに叩くんじゃなくて、他のことで相対化させるっていう戦略を取ればいいだけだよ。それが多様性じゃないかって思うんだけど。「あれがない、これがない」、「こういう奴らは俺たちを馬鹿にしているに違いない!」みたいなことばっかり言っていてもしょうがない。

五月:「ゲ◎エリット」のとき、サムソン◎橋さんがTwitterのプロフィール欄をすぐさま「無職ホモ」に変えたのが、すごく面白かった。そういう表現を同時多発的にやることによって、あの写真を相対化させていけばいいんですよね。

文子:企業にも大学にも「パワーレズビアン」だってけっこういるんだから、そっちも企画してるのならバランスがよかったと思う。でも…まあ、カミングアウトの敷居も高いし、女の子たちは仲間内で突出することや、悪目立ちを嫌がるのが子どもの頃からの性分になっちゃってるから、出る人がまずいないだろうけど。

長子:意地悪な見方をすれば、東部戦線の、ポリコレ的な活動家も自己承認とか自己実現のためにLGBTを利用しているとも言えるわけで、そういう意味では、金の匂いがするかしないかの違いでしかないかって気もするんだよね。

キミ:日本独特なのかわからないけど、金を稼ぐことは美徳じゃない的な…。

葉子:ああ、ちょっと日本的なのかもね。お金を稼ぐことや、お金を持っていることを否定的に捉える文化的背景があるよね。

長子:アデイの伏◎さんだって典型的な自己承認系じゃない?

全員:(爆笑)

長子リブを気取ってるけど、あのババアだって気持ち悪いヒロイズムに浸ってただけよ!

五月つまり、みんな同じ穴の狢だったっていうことね。

全員:なるほど(笑い)。

 

イラスト・PIPIブルー