すっかり浦島太郎になってしまった伏見憲明(53才)が、いまどきのLGBTについて学び直すコーナー「おしえてLGBT!!」。最初のゲストは、若い世代に大人気の「やる気あり美」のリーダー、太田尚樹さん(28才)。はてさて、謎のLGBTグループ「やる気あり美」とは? 新世代感覚で様々なコンテンツを世に問う太田尚樹さんの魅力とは?

 

file.1 太田尚樹(前編)「在日は笑われないけど、ゲイは笑われる」

 

 十代の恋は尊い

cvnstxpvaaatew1
伏見
:今度、お店でウェブマガジンを立ち上げるんですけど、その中に「おしえてLGBT!」というコーナーを企画しました。伏見のような時代遅れのホモからすると、LGBT時代のことはもうわからないので、いろんなひとたちに教えてもらおう、と。それでトップバッターで、ゲストに太田尚樹さんを迎えて、いまどきの若いLGBTについてご教授いただきます。

太田:いやいやいや。

伏見:それで、あの…、太田さんのやっているグループですが、「やる気あり美」さんって言うんですかあ?

客席:(笑い)

伏見:「やる気あり美」って…なに? と多くが感じることだと思うのですが、いったいどんなやる気の集まりなんですか?

太田:説明としては、「LGBTをテーマに、アート、エンタメ・コンテンツを作るクリエイティブチーム」です。

伏見:あぁ、そうなんですか。いや、HPを見て、そこにアップされているメンバーの集合写真からすると、イケメン・ゲイに対する反撥とかあるのかなとか…老眼なんであんまりよく見えないんですけどね(笑い)。

太田:そういうわけではないです!(笑い) だけど、潜在的には負け根性みたいなのがあるのかもしれないです。いや、わかんないですけど。

伏見:それじゃあ、まあ、クリエイティブなところで輝こうっていう。

太田:輝こうっていうか、クリエイティブなことをやりたいなと思ってます。

伏見:どういうものを作っていらっしゃるんですか?

太田:ゲイが感じる「思わせぶりなノンケ男性の一言GIF劇場」というのを作ったり、最近は音楽の動画コンテンツも。

伏見:はいはい、見ました。『確信』ですね。すごく素敵な作品で、あれで救われる十代のLGBTは少なくないと思いました。どなたが作っていらっしゃるんですか?

太田:メンバーの井上涼がアニメーションを作って、歌っているのも井上です。だいたい井上なんですよ。

伏見:んじゃ、アンタは何やってんのよ!?

太田:(笑い)何にもやってないって言ってもいいくらいなんですけど。まぁ、歌詞を井上と一緒に作ったり、編集者的立場ですね。もともとは井上が、誰がゲイなのかを探すサスペンスもののアニメーションを作りたい、って言い出したんですが、でもせっかくならメッセージ性のあるものにしようとなった。

伏見:どういうメッセージを伝えたいと?

太田:LGBTであれ、なんであれ、十代の恋は尊いっていうことですね。

伏見:十代の恋は尊い、っていうメッセージはご自身の経験を重ね合わせて……?

太田:伏見さん、エグイこと聞きますね(笑い)

伏見:あのね、はっきり言って、ぼく、太田さんにいい感情持ってませんから!

太田:(笑い)持ってくださいよー。

伏見自分より若くて才能のある子はみんな嫌い!!

客席:(笑い)

伏見:それはともかく、『確信』はすごく反響があったみたいですね。

太田:今は、国内外っていう感じで、25万PVくらいは見てもらってる。もちろん、「ホモ死ね」みたいな反応もあるんですけど、でもほとんどはポジティブな反響です。ノンケの方からも、「LGBTとか関係なく恋っていいよね」って感想をもらえることが多かったです。

伏見:ゲイの発信する表現に、ほのぼの系って少ないじゃないですか? ゲイカルチャーって、お洒落なアートとか、キャムプなテイストのパロディとか、あと、真崎航センセイに代表される「すっげぇ、やっべぇ」みたいな(笑い)アレになってしまう。だから、そういうパターンじゃないところで出てきたなーと新鮮でした。

太田:ありがとうございます。

伏見:ぼく、最初にお目にかかったとき、太田さんの言葉にすごく感銘を覚えたんですね。「LGBTとアライって、アライがLGBTを支援するとか助けるだけじゃなくて、アライの人もLGBTと一緒に自由になる関係がいい」っていうようなことをおっしゃっていて、ほーっと感動した。

太田:感動はせんでいいので、僕にいい感情持ってください!(汗)

伏見:新しい感性を持った人が出て来たなあと嬉しかったのは、ほんと。 それで、今日もお招きして、改めてお話しを伺いたい、と。

 

イケてるひとになりたかった!

伏見:少し前、一橋大の大学院生が自殺された件がありましたが、どういう風に思いましたか? ぼくは、すごく痛ましい事件だと思うし、差別の構造の中にそれを位置づけることもできるし、それを運動として世に訴えていく戦略もありだと思うのだけど。ただ、個人的には共感しない。彼自身がどんな精神状況で亡くなったか知らないし、また、ほんとうのところそれがLGBTへの差別問題だったのかどうかもまだわからない。だけど、もし、LGBTっていうか同性愛に関して悩まれて、自死されたっていうことであれば、彼の人生を否定する気は毛頭ないけれども、ほかの若い人にはね、「そんなことで死ぬなよ」って言いたい。今、現時点で差別の痛みを感じている人にとっては抑圧的な言い方かもしれないけど、でも、生きていれば楽しいこともあるし、乗り越えられない差別じゃない、って。

太田:まず、彼に会ったことがない、っていうことがあります。もしかしたら精神疾患気味だったのかもしれないし、LGBTであることが直接的な原因だったのかどうかまでは誰にもわからない。っていうことを考えると、ある種、LGBTアクティビストたちがSNS上で、喜々として怒っているように見えたのが気持ち悪かった。

伏見:鋭いところをついてくるねー。まあ、昔から気持ち悪い業界なんですよ(笑い)。

太田『でもオマエ、本人に会ったことないじゃん、加害者とされているノンケの男の子にも会ったことないし、なんにもわかってないじゃん』って思った。

伏見:アデイのお客さんで最近、難病で若くして亡くなっていったゲイの子がいてね、ゲイであることをやっと楽しめるようになったところで病に倒れ、もっともっと生きたかった彼の無念を思うと、ともかく自ら命を断つのはよそうよ、って。

ところで、太田さんがそういう感想を言うのは意外な感じもあって、ほら、大学時代まで、ゲイであることに悩んで自殺したいと思っていた、って語っていたじゃないですか。

太田:だから、彼がなくなったこと自体には共感するところはあります。

伏見:その年頃の時にはやはりひどく悩まれたんですか?

太田:そうですね。気づいた時からずっと。

そもそも僕はイケてるひとにずっとなりたかったんですよ。それが思春期の頃、IKKOさんが全盛期で、テレビをつけたらIKKOしかいなくて、このひとと一緒だったら負けじゃん!って思った。だって、これじゃあ、笑われる側じゃん、イケてないじゃん!って。

伏見:太田さんの最初の印象って、お顔立ちが吉本っぽいこともあって(笑い)気のいい人なのかなって思ったんだけど、実は、そんなにいい人でもないよね?

太田:(笑い)そんなことないですー!

伏見:マジメな話、いい人でもあることも間違いないし、優しくて気配りもできて繊細な方だと思う反面、すごく傲岸不遜で、セルフィッシュで、怒りを貯めている人だってことを、関わっていくうちに実感しました。でも、その両方の顔を持っているからこそ面白いなあ、と。そういう二面性が、いまどきの若者なのに、大学生になってまで同性愛のことで自殺したいとまで思い詰めるところと関係があるのかな?って。

太田:二面性ですか……うーん。

 

恋した男の彼女に憑依!?

ct7gurausaaayc9伏見:生い立ちを伺いたいのですが、お生まれはけっこう“お嬢”なんですね?

太田:親は金持ちですね。

伏見:その話を聞いて、うちのバイトのこうきが怒る怒る。アデイのスタッフって、社長の息子がけっこういて、太田その顔でオマエもか、って(笑い)。お父さんの会社は一部上場?

太田:一部ではないですけど、上場はしてますね。

伏見:“お嬢様と”して大事に育てられた?

太田:大事っていうのも色々な見方がありますけど。

伏見:でも、生まれたのは尼ケ崎かどっかでしょ?

太田違います! 十三です!!

伏見:似たようなところじゃないですか。川とかあるところでしょ?(笑い) じゃあ、十三のお嬢様として、何一つ不自由なく育った。

太田:そうかも。

伏見:ちゃんと、ご両親も揃っていて?

太田:ちゃんと揃ってました。

伏見:ご兄弟は?

太田:姉が二人います。

伏見:ぼくなんて、幼少の頃から目も当てられないようなべったらオネエだったんですけど。太田さん幼少の頃はどんな感じだったのでしょうか?

太田:カミングアウトしたときも、親にも姉にも「わかんなかった」って言われたので。

伏見:ということは、子どもの頃はオネエではなかった。その飄々としたキャラは、演出的なものではなく、ネイティブなものなの?

太田:自然なものです。

伏見:なるほどね。噂だと、太田さんってモテるってことですが、それは天然の男性ジェンダーのおかげかもね。ゲイって大体、天然系の男性性にコンプレックスがあるんだよね。では、オネエってことでいじめられることもなく?

太田:それでいじめられるはなかったですね。

伏見:オネエでいじめられるわけでもない普通のお坊ちゃんが、いつ自分がおかしいなと思ったのか。

太田:自分がゲイだって気づいたのは高1の頃でしたね。

伏見:案外、遅いね。それは性的な発育が遅かったってこと?

太田:中学のときには女の子とスケベなこととかもしてたんですけど。

伏見:あら、ちょっと聞き捨てならない(笑い)。もう中学で女子と交尾をしていた!

太田:はい、したこともありました。

伏見:それは、自然な欲望としてやってたんですか?

太田:今振り返ると、超興奮してたわけではなかった。でも、中学になって恋愛とかエロネタが遊びの一つとして増えて、それが楽しかった感じです。それに、僕の地元は荒れてたんですよ。

伏見十三の川原って、中学生がみんな交尾してるの?

太田:割とでも、そういう感じでした。

伏見:(笑い)。じゃあ、家柄はいいけど育ちは悪いみたいな。

太田:家柄も良くないですけどね。金はあるけど、家族関係も少し険悪だった。

僕の家庭は両親ともに在日韓国人二世なんですけど、両親とも大学時代に自分のルーツを学ぶ研究会みたいなのに入っていたんですよ。父親は、先祖が繋いできてくれたことに感謝したい、恩返ししたいっていうマインドがすごく強い人。でも、当時、在日は商店街で小さな個人商店をやるか、起業するしか就職先がなかったんです。それで、起業した。以来、父親はずっと仕事人間で、常に何かに追い込まれていて、僕が物心ついたときには怒るか手をあげるかみたいな感じだった。そういう記憶しかないんですよ。

伏見:けっこうDV家庭っていうか。

太田:そう言えるかもしれまんせんね。それで母親はいつも悲しそうで。だからどうにか母親を楽しませようって考えていたのが僕の幼少期だったんです。あんまり両親が仲が良いってことではなかった。

伏見:高校になって決定的に自分がおかしいと気づくきっかけは?

太田:いや、もう、サッカー部のエースのジュンちゃんって子とクラスが一緒になって、性的興奮を覚えたんですよ。ジュンちゃんが、僕の仲良かった女の子と付き合うことになって、それがすごいショックで、彼のことが好きなんやなって明確にわかった。

伏見:へぇー。じゃあ、その「好きなんや」ってことに気づいたときに、「同性愛」とか「ホモ」とか「オカマ」って言葉が突然、自分にやってきた?

太田:そうですね。言葉としては、同性愛くらいまでは自分の中にありました。

伏見:え、「同性愛」はあったけど、他は、ジャンルが違う?

太田:自分としては「同性愛」っていう言葉がしっくりきていた。「ゲイ」っていうのはもっと変態で、自分はそれではないから、「同性愛者」って言ってる感じ。

伏見:それは何年くらいのこと?

太田:そうですね、15,6歳だと、2000年代初頭。

伏見:ぼくが鬼畜のようなセックスをしている年代に、まだそんな原始的な悩みを抱えていたとは(笑い)。太田さんにとって「同性愛者」って言葉は肯定的な響きがあったんだ。

太田:ゲイとか、ホモとかっていう言葉よりは。

伏見:ジュンちゃんへの思いっていうのはどうなるんですか?

太田:ジュンちゃんは中性的な人だったんですよ。ずっと僕にくっついてきて、それこそ思わせぶりな態度だったんですよね。

伏見:はっ、それが「やる気あり美」のコンテンツにいかされた!

太田:怨念となって(笑い)。それからジュンちゃんのことを高1から浪人時代まで4年間ずーっと好きだったんですよ。

伏見:カムアウトとか告白とかは?

太田:いや、しなかったですね。でも向こうはわかってると思います。明らかに好きやったから。

伏見鼻息荒いぜ、こいつ、みたいな?(笑い)

太田だからそれこそ一橋の大学院生の気持ちがわかる気がする。自分も好きすぎて、冷たくされるのが耐えれないみたいな状況で、メンヘラモードもメンヘラモードやったんですよ。

伏見:でも、2003年だったらもうネットの時代になっているので、同性愛についてだっていろいろ調べられるじゃないですか? ぼくなんかの時代は本すらなくて、三島由紀夫の『仮面の告白』くらいしか情報がなかった。

客席:(笑い)

伏見笑ったな、オマエら! でも、太田さんほどの能力があればふつう自分で検索するじゃない。パソコンだって買い与えられていたわけでしょ?

太田:いや、買い与えられてはなかったです。スマホとかもなかったし、携帯も、友達とメールするくらいしか使わなかった。

伏見:自分のことが知りたくて、どこかで調べたりしないの?

太田:調べました。でも、その時に「ゲイ」っていうワードは絶対入れられなかったんですよ。認めたくなかったから。「同性愛者」までがギリギリ。でも、それで出てきたサイトで自分のためになったとか救われたっていうのは、記憶にまったくないです。それに、父親のパソコンだったんで、履歴が残る不安もあったので、なかなか調べられなかった。だから、毎日絶望してました。

伏見:その絶望は、同性愛ということへの絶望なのか、ジュンちゃんに愛されないっていうことの絶望なのか?

太田:ジュンちゃんに愛されないことの絶望もそうですが、ベースは自分が同性愛者だから好きとも言えない、わかってももらえない、変な奴扱いしか着地がないみたいなことに、すごく悩みはしました。家に帰って、部屋で一人泣いてました。

伏見:太田さんのキャラだったら、お友達だってけっこういたでしょ? よくいる、ゲイの匂いを嗅ぎつけてやってくる女友だちとかに相談したりしなかったのかなあ。

太田:最近、高校時代にジュンちゃんと付き合っていた女の子と会って、カミングアウトしたんですが、「まったくわからんかった」って。その子とは毎日2時間電話するくらい仲が良かったんですけどね。高3くらいのときに、彼女とジュンちゃんが別れたんですよ。僕はむしろ彼女に自分を重ね合わせたから、なんで別れんねんって、二人を許せず、もめたんですよ。

伏見:ふつうは、「ざまあ味噌漬け!」とか思うわけですが。

太田:いや、ほんとに。

伏見むしろ、その女の子に憑依して、ジュンちゃんにやられてるその女になって、ときどきオナニーで抜いてた

太田:そうです、そうです(笑い)。

伏見:あぁ、憑依系ね。

太田:それだと思います。だから、別れられるとか超困る。

伏見:その彼女からしたら迷惑な話しだよね。

太田:そうだと思います。本当に(笑い)

 

在日は笑われないけど、ゲイは笑われる

伏見:ところで、太田さんは同性愛者であり在日でもあるというダブルマイノリティになるわけですが、在日であることのほうの痛み、生きがたさはどうだったんですか?

太田:僕は直接的に感じることはあんまりなかったですね。名前も太田だし。例えば、「金」さんの子だったりしたら言われたりするみたいですが、僕は言わなかったらバレないことが多かったので。

伏見:でも、だったら、オネエじゃないゲイの太田さんは言わなきゃバレないわけだから、特に悩まなくてもいいってことにはならない?

太田:なんだろうな……。在日に関しては、僕にはどこか“他人ごと感”があったんです。親の世代はそれで苦しんできたんですけど。

伏見:太田さんは在日何世になるの?

太田:在日三世です。

伏見:周りの友人は、在日三世だって知ってたんですか?

太田:知ってます。別に隠してたりとかはしてなかったんで。

伏見:つまり、在日であることは人には言えるけど、同性愛は言えなかったっていうことか。太田さんの中では、在日よりもホモが下ってこと?

太田:ホモが下っていうか…そのことで、自分自身がしたいことをさせてもらえない、って思いがあって、逆に在日であることではそういう感じはなかった。朝鮮中高とか行ってたら別かも知れないんですが、僕は日本の学校に行ってたので。あえてその文脈で語るとすれば、在日っていうことよりも家庭の方がストレスでした。親族が集まったらおばさんとかが蹴り合いをしているようなことがふつうの親戚関係で(笑い)。

伏見:ちょっと殺伐とした家風だったんですね。

太田:あと、在日は笑われるとかはないけど、ゲイは馬鹿にされる、笑われる、変態だと思われる、みたいな認識は僕の中にありました。十代の頃は、「実は、在日なんや」って話をしたら、「え、外国人なんや、かっこいいね」って言われることが多かったです。在日で、あからさまに差別を受ける環境には僕はいなかった。

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-12-13-0-05-01

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オネエたちの大縄跳びに泣く

伏見:そして高校を卒業し大学生になるわけですが、ゲイとしてのあなたの生きがたさはどうなるんですか?

太田:大学に入ってすぐは、受験が終わって自分のやりたいことができるので楽しかったんですけど、高校時代みたいに、やはり一緒にいる子のことを好きになって、男を好きになることへの絶望がありました。このままいかなあかんねんや、みたいな……。それで、当時、神戸大学にあったKUGCっていうゲイのサークルに行ってみて初めて、自分の考えが変わったんです。

伏見:他の同世代のゲイに会って、どんな印象を持ちましたか?

太田:初めてのときが、ピクニックしてから飲み会するっていうイベントだったんですけど、ピクニックに行ったら、オネエたちが大縄跳びしてるっていう。

伏見すごくシュールでいい(笑い)

太田:今だったらいいんですけど、あのときの僕は体育会で、もっとノンケっぽかったんですよ。練習帰りに参加したんですけど、おネェたちが万博公園で大縄跳びしているのにショックを受けた。やっぱりこんなカルチャーか、みたいな感じだったんですが、その後も、キャンセル料の3,000円がきつくて、飲み会にも出たんです。そこでも、みんなさらにオネエ状態で大騒ぎになっちゃって、僕は端っこで黙って座っているしかなかった。そしたらその中のひとりが、喋りかけてくれたんだけど、「こういう場やと思ってなくて、正直、自分には全然合わない」って言っちゃったんですよ。泣きながら。それを訊いて、オネエたちがピタッとなりやんで、「いや、そりゃそうやな」と(笑い)。「ごめん、ごめん」とふつうになって。

伏見:今なら、そのオネエたちの優しい気持ちが染みるよねえ。

太田:実際そのときに、僕の中でゲイが「変態」から「人間」に昇格したっていうのがありました。こんなに悩んでる僕の話もきいてくれるんだなって。

伏見:いい出会いですね。

太田:だから、今もよく飲むメンバーなんです。

伏見:今の自分に置き換えたら、同性愛に悩んでる子が「やり気あり美」のサイトにいって、「ゲイがこんなブスばっかなら、自分、負けじゃないか!」って絶望するのと同じだよね(笑い)。

太田:一緒ですね、ホンマに(笑い)

伏見:公園でオネエが大縄跳びをやるなんて、ぼくから言わせれば革命ですよ、素晴らしい。でも、初心者には段階があるからね。

太田:それで、そのサークルに関わろうって思って、ちょいちょい行くようになったんですね。

伏見:関わろうっていうのは、彼氏を作りたいとかじゃなくて?

太田:それよりも、相談できる友達が作りたかった。大学二年ですね。そこで友達が増えた。その後、僕は世界を旅して回る時期があって、エジプトとか行ったりして、そこで初めて出会った日本人の女の子にカミングアウトして、それでまた変わった。

伏見:じゃあサークルには行ったけども、大学では全然知られてなかった?

太田:そうですね。全然知られてなかったです。でも、旅先で一人にカミングアウトしてから自己承認度も上がりました。

伏見:0と1は全然違うもんね。

太田:その頃、好きになったノンケの男の子に告白したんですけど、それがカミングアウトした二人目になりますね。その彼がすごい紳士的で、振られはしたんですが、「俺は今のところ女の子しか好きになったことないから、むりやけど」って言ってくれた。

伏見:いい子じゃない! 最初のカミングアウトも肯定的に受け入れられて、告白した彼にも受け入れてもらって、もうすべての舞台設定は出来上がっていた…

太田:え、何がですか?

伏見:いや、だからさ。あなたが社会に働きかけるまでもなく、カミングアウトの舞台は整っていたっていうことなんじゃない?

太田:ああ、そうですね。僕の生きやすさって意味ではまさに。大学を卒業するときには同期全員にカミングアウトして、彼らも「あぁそうなんや」って。

伏見:そのとき、NOと言った人はいたんですか?

太田:いや、いなかったですね。「太田がゲイなんて、今年イチ笑った!」って言うやつはいましたけど(笑い)。「太田がゲイってうけるな」っていう感じのことをメッチャ言われました。

伏見:大学時代、恋愛的なことは? オネエ・サークルの中で素敵な男ができた?

太田:あぁ、そこではできなかったんですよ。でも、別の後輩といい感じになりまして。その後輩とはすごく仲が良くて、酔うと引っ付いたりしていて、ある日そういう感じになりました。そういう感じっていうのは、しゃぶるくらいですが。

伏見:具体的な行為が出ましたね。

太田:伏見さん、絶対聞くだろうなと思って、先に言っておこうと(笑い)。

伏見:しゃぶる行為まで行ったら、相手はホモってことですか?

太田:それがわからなくて。結局そいつは卒業後、結婚したんですよ。3ヶ月くらい毎日会って、ご飯を食べに行ってたりしてたんですけど、ある日家に行ったら、そいつが玄関で正座していて、なんやろうと思ったら、「俺、将来女の子と結婚したいんで、太田さんと付き合うのは無理です」って言われました。

伏見:すっごく好きだったわけでしょ? 「捨てないで!」ってすがらなかったの?

太田:僕らはちょっとした師弟関係みたいな感じだったんで、彼にとっての憧れでいたかったっていう気持ちがあって、すがりつく勇気がなかったんです。

伏見:自制心が強いのねえ。

太田:自制心というよりも、彼に憧れられてることのほうに優先度が高かったんです。

伏見あんた、その顔で、「憧れられて」とかよく言えるわね!

太田顔のことメッチャ言うじゃないですか(笑い)。

(後編につづく)