「レインボー国会に潜入!」

むしろ社会の側が積極的にLGBTに“接近”している

3月9日、衆議院第一議員会館で開催された「レインボー国会」(主催:性的指向や性自認に関する公正と平等を求める院内集会 実行委員会)に参加してきた。このイベントは、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた、LGBTへの差別解消と理解増進や、当事者と国会議員との交流を目的に企画されたとのことであった。

これまで、ゲイの当事者として、こうしたイベントのことをちょっと遠くから眺めてきた。正直なところ、「制度や法律はもちろん大事だけど、それができたところで、身のまわりの人々の意識を変えられるわけではないし、何より、今の暮らしにとりたてて不満をもっているわけではないもん」という思いは、少なからずどこかにあったからである。今回も、たまたま平日に時間の余裕ができたし、国会周辺に行くのも小学校の社会科見学以来だから、ちょっと覗いてみようかな程度の軽い気持ちであった。

けれども、会場に着いてみると、平日の正午からという時間帯にもかかわらず、定員300人の部屋が満員になりつつあるのに驚いた。比較的若い人たちも多かったように思う。

会の冒頭、実行委員長である松中権氏は、昨年報道された一橋大学法科大学院生の転落死事件に触れ、「あのようなことは、二度とあってはならない。人生で何かが起きたときのセーフティネット、そのための法整備が必要だ」と話した。

国会議員も、自民党、公明党、民進党、共産党、社民党と、多岐にわたる政党の議員が登壇し、超党派の人たちがこの問題に取り組もうとしていることは印象的であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とりわけ、参加した自民党議員の一人一人の発言をきいてみると、これまで自分自身が「自民党」に対して漠然と抱いていたイメージとは違うようにも感じた。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた、オリンピック憲章の理念が念頭にあるとのことだったが、

「LGBTのことに取り組み始めた当初、同僚の議員から、『うちの地元にそういう人たちはいないよ』と言われ続けた。その背景には当事者の人たちが声をあげにくい事情もあると思う。性のバリエーションを大切に、こちらが相手のことを決めつけないことも必要。」(牧島かれん氏)、

「社会的不条理やいわれなき差別をなくしたい。国民に正しい理解を広げていきたい。」(逢沢一郎氏)、

「看護師として、病苦の中にある人たちから学んできた。社会の中に生きにくさがあり、それを解消していきたい」(石田まさひろ氏)など、

自民党議員の中にも様々な意見があり、一括りにするのでなく、個人がどんなことを主張しているのか、丁寧に見ていくのも面白いと考え直した。

当事者からは、学校や企業の現場で直面している具体的な課題について報告があった。学習指導要領にLGBTのことを盛り込む活動をしているレズビアンの女性は、「13歳のころ、教科書に『誰もが異性に恋をする』と書いてあったことにショックを受けた経験がある。未来を生きるこどもたちが自分のままでいいんだと思えるためにも、教育現場を変えていきたい」と語った。

トランスジェンダーの立場からは、現在の性同一性障害特例法の問題点が指摘されていた。戸籍を変更する要件の中に「子どもがいないこと」「離婚をすること」「性別適合手術をすること」があり、国際的にはこうした要件が撤廃されているとのことだった。トランスジェンダーの子どもたちとの交流会を主催している別の当事者からは、「子どもたちが『将来の夢は手術です』と語るのは聞きたくない。人生の選択肢を狭めないような法律になってほしい。」との報告があった。

同じ“LGBT”の中でも、まだ知られていないこと、自分も知らないことがたくさんあり、法律を変えたり、新しく制度をつくることによって、こうした悲劇が少なくなるのならば、より充実した制度を求める活動も重要だと思えた。

さらに、よくここまで集まったなと思うほど、国連の弁護士、経団連のダイバーシティ担当者、オランダのLGBT団体代表、法学者など、社会の第一線で活躍する人たちが次々に登壇し、それぞれの立場から、LGBT課題に取り組む必要性を語っていた。

経済評論家の勝間和代氏は、「つい一年前ぐらいまで、LGBTのことは自分自身にとっても“インビジブル”だった。男女共同参画や一億総活躍と言っても、男女の既婚カップルを前提にしているのが現状。企業の生産性向上のためにも大事なこと。」と述べ、作曲家の三枝成彰氏は、「現在、LGBTが主人公のオペラを制作している。かつてはNHKにも、ホモセクシュアルの人を出演させないという内規があったと聞いているが、過去の偉大な作曲家には同性愛者がたくさんいて、この業界にはなくてはならない人たちだと思っている。」と語った。

それぞれの利害関係における思惑はさておき、自分のような、ちょっと引いたところからこのムーブメントを眺めてきた当事者よりも、むしろ社会の側から多くの人たちが積極的にLGBTに“接近”している、と言えるのかもしれない。もちろん、この数年でLGBTを取り巻く状況は大きく前進したし、それを先導してきた活動家の方々には敬意を表したい。その一方で、あまりに急速な変化に、自分自身の中にもためらいが全くないとは言い切れない。こうした心のざわつきは大切にしつつも、当事者の一人として今の状況をどううけとめ、何ができるのか、いろいろなことを考えさせてくれたイベントであった。 (了)

 

 

福祉平汰 / 東大卒。BussFeed 論説委員

写真提供 / 冨田格