• パレードの時くらいはせめて休戦すればいい

伏見:だいたいお二人の活動の流れは分かったんで、今時のことを。さっきも話題になったけど、パレードで自民党の保守派である稲田朋美さんが来ることに反対している人たちがいたけど、でもあれは話を聞けば、パレード実行委員はどの政党にも招待状を送っていたんだよね。まぁ、そりゃそうだよね。

赤杉:自分が実行委員会に関わっていた時代から、どの政党にも等距離に招待状を出すっていうのは大前提にあるので。

伏見:だから、文句があるなら実行委員に言えって話なんだよね。

赤杉:本当にそうですよね。

伏見:Twitterとかを見ていても、ある種の人たちは自民党なんか絶対ダメ、自民党はLGBTにとって敵みたいな立場。でも僕からすると、民進党と自民党の違いなんてたいしてないじゃん!って。出自からしたら一緒だし、むしろ民進党は自民党の出来損ないなんじゃないって思う面もある。半世紀以上生きてきて自民党に一度も票を入れたことがない僕が言うのもなんだけど(笑)。

赤杉: LGBT当事者だからといってLGBTの問題だけで投票を考えることはない。経済の問題で考える人もいるし、外交安全保障のことで考える人もいる。だから稲田さんと同じ党派の当事者にとっては、稲田さんが「LGBT問題もやる」って言ってるから、使える政治家なんだろうし、左派の活動家の多くは不倶戴天の敵だと思っているかもしれない。当たり前なんだけど、色んな立場の人がLGBTの中にいるっていうことが表面化したのが、稲田さんとパレードをめぐる一連の動きだったと思うんです。国会議員っていっぱいいるじゃないですか。自分の解決したい問題に対して、今回はあの党の議員を使おうとか、あの議員を使おうみたいな、もっとプラグマティックな、実利的に考えればいいのにね。党派的なことがダメって言うんじゃなくて、もし「パレードに稲田さんは来るな」って言うんだったら、「左派のパレード」を自分たちで立ち上げて、自分たちと考えの合う議員さんだけを呼べばいい。あんまり言うと「分裂を煽るな」って批判されるからアレだけど(笑)。どのみち全会一致は難しいので、せめてパレードとか政治を動かす時くらいは繋がって、「ちょっと休戦だけどそこは一緒にやろうよ」っていうのがないとね。さっき伏見さんも現実を動かすには色々な人と交渉しないといけないってお話されてましたけど、政治家、政党をめぐる問題ってまさにそうなんじゃないかなっていうふうに思います。

石坂:パレードが復活した時に、「みんなでパレード」っていうテーマが掲げられて、あの時の裏テーマを聞いたんですけど、「あの人も嫌い、この人も嫌い、でもみんなで歩こう」っていうのがあったみたいですよね。

伏見:とりわけ左翼傾向の強い人の中で、LGBT当事者の中の政治的な考え方の差異ってところにセンシティブじゃない人が多いよね。

赤杉:進歩主義だけど権威主義なんだよね。

伏見:あと、真理主義だから、「これは正しい。あとは認めない」みたいな活動家が多い。

伏見&赤杉:全然、多様性じゃないんだよね!(笑)

石坂:主観的なものって、絶対的じゃないから、正義と正義のぶつかり合いになっちゃうと、どっちが正義かってことは言えない。議会の中で自分は、「それが正義かどうかは分からないけど、自分はそういう使命をもってやっているんだ」って言うことを、「それは正義じゃないかもしれないし、対立することもあるし、それは主観が入るものなんだな」と思いつつやっていますけど、そこはなかなか伝わらないところはありますね。

伏見:僕ね、高校時代にもうデモに出ていた筋金入りの左翼だったから、左の気持ちがよくわかるのよ(笑)。

 

・クィア・セオリストは自民党と一緒?

伏見:右から左までいろんな政党がありますが、それぞれの政党がLGBTの人権問題に対してどんなスタンスを取っているのか。近年、政界はLGBT施策に積極的になってきているんでしょうか?

石坂:上から積極的にやっている政党もあれば、そうじゃない政党もあるけども、ただ区議会レベルの話になると、積極的に取り組むはずの政党さんでもご年配の議員さんとかで話がわかっていないなって人もいらっしゃる。

伏見:性の問題はどうしてもその人が生きてきた時代の制約があるからね。

石坂:逆に、上が取り組むことに積極的じゃない政党でも、若い議員の話を聞くと、「党はともかくとして、自分はやるべきだと思う」っていう人もいるから、そこは党のカラーだけでは測れないものがある。だから、各党のなかで、LGBTの問題を理解してくれる人を捕まえていくっていうことが必要なんだろうと感じますね。

伏見:最近、ほら、なんだっけ差別反対法案じゃなくて……、

赤杉:差別解消法案と理解増進法案。

伏見:差別解消法案っていうのはどちらの政党が?

赤杉:民進党とか野党ですね。

伏見:で、理解増進法案は自民党が出している?

赤杉:主に自民党ですね。

伏見:それはどう違うんですか? どっちも言葉尻からすると悪くない感じがしますが。

赤杉:そのことは聞かれると思ったので、調べたのですけど。今、国会では、超党派のLGBT問題について考える国会議員の議員連盟っていうのがある。そこで自民党の特命委員会に、LGBT問題について考える議員連盟の馳浩さんが呼ばれた。そこで議論した記録をもう一回読んだり聞いてみたんですけど。自民党が言いたいのは、まずは知識とか理解みたいなものを普及させるということ。自民党としては包括的な人権法案っていうのはあんまりやりたくないみたいで、今ある個別の法律で個々に対応できる問題は個々に対応しよう、(コレってもしかしたらゲイリブの究極の問題なのかもしれないけど)目指すのはカミングアウトしなくてもいい社会だ、と。話を聞けばすごく崇高で、そうなるのがおそらくゲイリベレーションの目標の一つなんだろうなって思うけど、それに対して野党側は、まずカミングアウトすることも大切だし、カミングアウトできる社会を実現しないとダメじゃないか。だから差別の防止を国や自治体や学校に配慮させるたり、相談窓口なんかも整えなさい、と。欧米では差別解消法案みたいなパッケージ法案がふつうにあったりするので、野党としてはそういうふうにしたらいいんじゃないかってことだよね。そこらへんが差異なんだと思う。

伏見:聞けば、どっちもいいじゃん!ってなっちゃうけどね。論理的に言うと、自民党の理解増進法案の方に、クィア理論派のセオリストたちは賛成すべきじゃない?(笑) だって、あの人たちは、アイデンティティ・ポリティクスはダメだって主張してきたわけでしょ。

赤杉:自分もそう思って、Twitterとか見たの。だけど、「そういう結論になってますけど、自民党がそこまで考えているはずもなく、逃げ口上にしているにしか過ぎません」って、それは直接聞けばいいのに。

伏見:ご都合主義だね。自民党も逃げ口上かもしれないけど、オマエも逃げ口上しているよって(笑)。

石坂:何をするかよりも誰がするかに意識がいっちゃってるんでしょうね。

伏見:だから、結局、好き嫌いの問題なんだよね。身内かどうかとかね。それこそ極めて日本的な保守主義じゃない。

石坂:議会でも、同じ内容の法案や議案であっても、「どこの党が出したから反対する!」なんてことはありますからね。

赤杉:よくある。

伏見:おふたりはさっきのLGBTをめぐる二つの案についてどう思いますか?

石坂:僕はどっちの案が通るのも厳しい情勢かと思ってます。というのも、野党系の案に関してはそもそも議席が足りない。与党側のものは、「アメリカとの関係の中でやります」って言ってきたわけで、アメリカの大統領が代わって、海外に対してまで積極的にLGBTへの差別解消をやれと言ってこない気がする。それに、オバマが大統領をやっていた時代でさえ自民党の中では抵抗する動きがあったので厳しいのかなと。

赤杉:ちょっと補足させてください。アメリカ以外の国、西ヨーロッパなんかを見ていると、中道左派・社会党政権で、PACSみたいなパートナーシップ法から同性婚になったわけですけど、例えば、それを進めてきたフランスのオランド大統領は次の大統領選には出馬しないことを表明している。次回が社会党政権なのか、政権交代するのかはわからないけど、少なくとも推進してきた大統領は変わります。

日本とイタリアはずっとパートナーシップ法がなかったんですけど、イタリアも今年になってパートナーシップ法ができた。だけど、イタリアはご存知のとおりカトリックの総本山があるし、つい先日、若いレンツィ首相が「憲法改正の国民投票をやって負けたら退陣します」って宣言して、投票で負けて退陣が決まり、こちらも政治情勢が波乱を含んでいる。欧州全体を見て直ちに後退するってことはないと思うんですけど、より推進するって流れは止まりつつあるのかな、っていう印象があります。ヨーロッパもアメリカもそういう状況で、日本は2020年に五輪があるのでやろうってことになってるけど、保守政党は良くも悪くも実利っていうのを大事にするので、実利が減りつつある中で政策優先順位がどうなのかっていくのか、先がなかなか見えない。

石坂:外圧で進めるってやりかたが日本はあるんだけども、国内で合意形成をするやり方もあって、例えば障害者関係の法律だと今年度実際に施行された障害者差別解消法がありますけど、その前段階では障害者自立支援法があって、その前は障害者基本法がある。差別解消法が障害者の場合にあるように、LGBTの場合には野党案がある。で、自立支援法と若干違うけど、自民党の案が支援をしていくような理解促進法を考えている。だけど、その一歩前のLGBT基本法みたいなものは、もしかしたら自民党と野党が出したもので共通点を探り合っていって、それだったらありえる感じもあって……。

馳浩議員 ©︎冨田格

国会の動きを見ていても、昔は何年か前まで超党派の議連があった。だけど安倍内閣の関係で議連の代表であった馳さんが文科大臣になって、議連ではなく大臣として動き始めた。その中で馳さんは学校向けにLGBTの取り組みをするような通知を出してくれて。多くの自治体の方ではなかなか授業で取り上げるところまで行かないんだけど、子どもに何かあったら支援しなきゃってところまできた。だけど大臣となることで馳さんが議連から抜けてしまった状況下で自民党と野党がそれぞれ別々の案を出してしまい。超党派で一本化した法案を作るのではなく、与党と野党の間の幅ができてしまった……。でも内閣改造による大臣の交代が起き、今度は逆に理解促進の側の案を作った自民党の方のプロジェクトを進めた稲田さんが防衛大臣で抜けた。そして、逆に大臣をやめた馳さんが超党派の議連に戻った感じになってるから、今までの二案に分裂する前の状況に立ち戻ることができるかもしれない。簡単ではないことだけど、もう一回それを精査して、どこまでだったら合意できるのかってことを作っていく。そこに対してLGBTの側はどうかかわっていくのかっていうことを考えていけるといいのではないかと思う。

細野豪志議員 ©️冨田格
やっべイケメン!

赤杉:政治家とか政党の動きって、有権者の範疇外というか手が届かないところにあるけど、色々な情勢が動く中で、ベストではないが最低限合意できるところは何か、それに向けて各政党どういうふうに調整しなきゃいけないかっていう戦略みたいなものが必要。どの党につくとかそういう話じゃなくて、どの党も引っ張ってこなきゃ動かないので、それをちゃんとできるかどうか。

伏見:「自民党はやっぱり本気じゃなかった」ってことで溜飲を下げたいところがあるじゃないですか。ああいうのって、アクティヴィズムとしてはちょっとバカっぽいよね。問題はどう自民党を動かすか。動かない自民党をいかに引き寄せるか。

石坂:どの党にも本気じゃない人ややりたくない人はいるんですよ。多かれ少なかれ。でも、その時にやる気のない人のことばっかり見て文句を言うよりは、やる気のある人のバックアップをする方が絶対に建設的なので、そういった発信の仕方をしなくちゃいけないんだなっていうのはあります。

伏見:現在は米国でトランプが当選したり、ヨーロッパの右傾化とかがあって、ある意味で日本のLGBTバブルも弾けたっていうか、雰囲気で盛り上がる時期はそろそろ終わりで、現場の積み上げっていうのが大事ですよね。だから、そこに発想転換できたらいいのにね。

 

  • なぜ中野区には同性パートナーシップ条例ができないのか
赤杉さんのご著書

伏見:ところで、2015年、渋谷と世田谷の同性パートナーシップ法案が成立して、石坂さんの選挙区の中野区にはないわけじゃないですか。それで、そのことに対して、石坂は何をやってるんだって言う人が少なからずいたんですが、それはどう思いますか? 僕も思ったんだけど。

石坂:いくつか理由はありますけども、ただ言えるのは、(渋谷区や世田谷区のような非自民系の首長ではなく、日本の大半の自治体と同様に)自民党が推薦を出して当選している区長の自治体の中では、恐らく中野はすごく進んでいる方だと思っています。で、そういった中で、区長から「パートナーシップって形だけやればいいの?」って言われたんですよ。要は、渋谷区長とか世田谷区長が「パッケージは作った。中身はこれからやってきます」と言っている中で、中野は中身をまず作ってきた。中野は同性のカップル、これは証明書をもらう形でカップリングであろうが、事実上の婚姻関係(一緒に住んでいる)であろうが、引越しをするときに「同性のカップルじゃ住めない、困った、断られた」っていう場合には「区の住宅の相談の窓口で相談に乗りますよ。区の紹介で不動産屋さんへ行きますよ。物件がみつからなかったら区が不動産屋さんに一斉FAXして物件情報を提供してもらって、っていうことができますよ」っていう、それはLGBT専用じゃないけどもLGBTも対象ですよっていうふうにできている。で、災害が起きた時に安否情報がわからなくなってしまったっていう時に、中野区が作っているカード、緊急避難先カードに同性のパートナーも連絡先として指名できます。ちゃんと連絡が行くはずです。あとは、同性カップルでもDVがありますから、DVの相談も同性カップルでも対応します。っていう形で一個一個潰していったほうがいいんじゃないという形で進んでいます。

赤杉:「石坂は何やってるんだって」言ってる人の中に、中野区民はいますか?

伏見:いますよ。投票した人も。

赤杉:じゃあまず、「あなたが声を上げってくれ」って言いたい。世田谷は上川あやさんがセッティングをして、保坂展人区長を始め、区の幹部と困っている同性カップル7、8組位を会わせて、こういうことに困っているっていうニーズが伝わって動いたんです。渋谷も条例を作るときに、レズビアンカップルの方だとかがヒアリングで呼ばれたり、同性カップルがどう困っていてこういう制度が欲しいのかが、目に見える形でニーズになったから、行政は取り組むことになった。私たちが、中野区でもセッティングするので、同性カップルで困っている人はいないかと呼びかけたんだけど、「でもそんな困ってないし」っていう区民のゲイカップルが多かった。行政や政治って、今困っている人に対してどうするっていうことに優先順位があるので、それをやりたいのであれば実際に困っている同性カップルの人が顔を出してくれないと困る。我々がそれをやっても選挙のための売名にしかならないので。

伏見:でも、カミングアウトの敷居もあったりするから、政治家とかリーダーがそういうものが必要だと思えば、そうなるように演出していくのが仕事だとも思うんだよね。

石坂:やはり、優先順位の問題があります。自分がLGBTの当事者から受ける相談は、LGBTの問題より貧困、依存性、欝病、HIV…といった相談が圧倒的多数を占めている。中野区って選挙の後に即日開票できないんですよ、予算がなくて。渋谷区はパートナーシップ制度をスタートして色々な仕組みを回すのに、100万弱くらいの予算を使っているんですね。で、中野は同じタイミングで何をやったかっていうと、HIV即日検査を増やして、そこに約100万を使った。中野区はHIVの陽性者率も高い区なんですよ。視覚障害者よりもHIV陽性者の方が中野区は多い。そういう自治体で、実際に検査を受けたいんだけど定員がいっぱいで受けられなかった人も多かった。だから、さらに予算をもう100万、パートナーシップ制度につけてくださいって、言えない面もあります。

伏見:優先順位の問題とか予算の問題とかは、言われてみれば納得するんですけど、でも、石坂さんだって長くゲイの問題に関わってきて、アクティビストとしてもやって来られたわけじゃないですか。現実には無理かもしれないけど、中野でもやってみたいんです!っていう前向きな打ち出し方がもうちょっとあっていいんじゃないの?

赤杉:それが政治の難しいところで。当事者であって無所属の石坂さんがそれを主張すると、潰そうとする人たちが必ず出てくる。だから、それを誰にどのタイミングで声を上げさせるか、が問題なってくる。彼が声を上げるよりかは、より大きな会派の人がそれを言わせて、そこに当事者をつないでいった方がより実現しやすくなる。そこは考えて狙っているところではあります。だから、そのために各会派の人と話せるようにしているし、ただ、それだけだとなかなか難しいので、当事者の人も一緒に声を上げていただけると、より「そうか」って思ってもらえる。

伏見:その着火するのは、政治家の役目なんじゃないの?

赤杉:そうそう。だから着火するのを狙って動いているんだけど、無所属っていうのは手の内を全て明かしてしまうと、潰されてしまうので。

石坂:議員はアクティビスとではないので。少なくとも、「LGBTの同性パートナーシップ制度をやれ」ってことを議会で主張して、「やらない」という行政からの言質を取って、やらないことを確定させてしまうことは政治家としては避けるべきだと思います。それで「多数派の保守政党に潰されました、行政に潰されました」と喧伝して選挙で主張するパフォーマンス姿勢をとるほうが政治屋的には選挙の時に票は集まるかも知れないですけど、ますます保守政党や行政が頑なになって、結局話が進まなくなってしまう。

赤杉:だから、今はその土壌作りの最中なんです。

伏見:素人ではそういう政治の現場の機微はわからないねえ。今日はとても勉強になりました! お二人の益々のご活躍、期待しています。

(了)

 

収録 / 2016.12.7 / A Day In The Life に於いて

赤杉 康伸(あかすぎ やすのぶ、1975年5月5日‐)は、北海道札幌市出身、現在東京都在住のゲイ・アクティヴィスト。北海道札幌南高等学校卒業後、北海道大学法学部山口二郎ゼミでは政治学を専攻。大学院在学中、北海道セクシュアル・マイノリティ協会(HSA)札幌ミーティングに参加し、ゲイ・アクティビストとしての活動を開始。著書に『同性パートナー』( 社会批評社2004年)(wikiより)

石坂 わたる(いしざか わたる、1976年9月11日 – )は、発達障害児の教育と心理の専門家、ソーシャルワーカーであり、中野区議会議員。 元養護学校教諭・専門学校非常勤講師。成蹊大学経済学部卒業。千葉大学特殊教育特別専攻科発達障害教育専攻修了。立教大学21世紀社会デザイン研究科博士前期課程修了。東京都出身。(wikiより)

撮影・中野泰輔