【パヨクのための映画批評】

執筆者・竹美

プロフ / ほぼカムアウト状態の会社員。九州のサヨクな家庭に育ち、サヨク思想に染まっていることに無自覚なまま二十歳を迎え、周囲の同級生が順当に就職活動を開始した頃、全然やる気になれず焦って大学院へ逃亡。それが、「企業=金儲け=巨悪」だと信仰していたためだと自覚したのはその10年後。「思想転向」のリハビリ過程で、「真っ先に悪を告発する紅衛兵」の素養を小学生位のときに発揮して同級生にウザがられていた記憶もフラッシュバック。

このコーナーでは、映画を通じて「私やあなたというサヨク」の滑稽で哀しく、正しくて誤っている物語を発見していきたい。

どきどきホラー映画に滲む薄ら寒さ 

~「ドント・ブリーズ」(”Don’t breathe”、アメリカ、2016年)~

 

子供のころからイデオロギーどっぷりで育ってしまった私は(プロフ参照のこと)、却って人知を超えたものに憧れを持ってしまったのか、昔からホラー映画が大好きです。第1回目は、昨年公開のアメリカホラー映画「ドント・ブリーズ」(2016年)をご紹介いたします。

この作品の舞台はアメリカのデトロイト市郊外。

余談ですがデトロイトが舞台のホラーSFと言えば、民営化(国鉄民営化反対って言ってた時代を思い出して!知らない?じゃあ今すぐ知って!!)された警察が街を牛耳るギャングの親分を潰すというコメディー映画「ロボコップ」(1987年)が有名です。80年代の米国映画は「ドラッグ・HIV・貧困」が覆っている時代だったためか、却って歴史に残るホラー映画が多いのですが、その後の90年代の繁栄を考えればまだまだ希望はありました。21世紀には、デトロイト市は民営化どころか財政破綻です。

そんな街の若者たちは、絶望通り越して親世代に何も期待せず、自分しか頼れないと思い込んでいるようです。大学ドロップアウト→ネットで起業→大儲け、な「ソーシャルネットワーク」(2010年)のような成功物語がもてはやされる裏返し。

そして主要人物はほぼ全員白人。当地の人口比率ではアフリカ系(黒人なんて言い方、サベツよ!)が多いはずなのですが、ほぼ映しません。その設定にすることで、「人種のもんだい」を避けているかのようでもあり、むしろ、貧困白人でいるのきっついわ、という感じに仕上がりました。

しっかしね、主人公の若者3人が病んでるんですよ。親と上手く行っていない少年は父親の仕事を利用して泥棒を思いつき、少女は妹を連れてネグレクト毒母からの脱走を企図、もう一人の男子は盗品の売人で、いっぱしの男のつもり(死亡フラグ)。そして「盗んだ金で3人でカリフォルニアに脱走」という稚拙な夢を抱いているの…カリフォルニアって一体。おまけに泥棒に入る家は、盲目の老人のお宅! 全部間違っています。でも、そこはお笑いホラーのサム・ライミ製作。驚異の反撃を食らいます。だって相手はナヴィ星戦争帰りの兵士ですよ。勝てるわけない(映画が違う)。

じゃあ、質問です(ちえみさん風に)。この子たちは大統領選挙に行くでしょうか?

本作鑑賞後、CNNでトランプさん当選のニュースを観ました。自分の映り方にのみご執心の人々が次々に出て来て「台詞」をがなるCNNの番組は異様ですが、あの大統領選挙人選び、投票率は6割だったそうですね。結局若者の閉塞感は解決できないのでは。本作はそのことを端的に指摘しています。

ホラーはバカだが役に立つ。今日もそう信じてホラー映画を観ようと思います。