「モエ先生の部屋」第二回

既婚男性との気軽なセックスに潜む罠〜

モエ先生 / 謎の女弁護士。心優しき酒豪。泥酔してアデイに現れ、MOETをしこたま飲んで更に泥酔して去っていく。たいてい、おとものラクダを連れている。

みなさま、ごきげんよう。モエです。

こないだ、いたるさんの日(火曜日)、すごい酔っぱらって帰って、自宅のコンクリ壁に右目の上、眉のところを強打したらしく(泥酔して覚えてない)、朝起きたら、右目の周りが真っ青なあざになってて、大変でした。打たれ強いボクサー?みたいな。

仕方ないから、眼帯して会議に出たのですが、片目だと、会議資料が読めない読めない。

さて、本日は、セフレの妻とのトラブルのご相談です。

 

「モエ先生

リアル・アデイはまだ初心者の私ですが、ぜひ、相談に乗ってください!

自分はゲイで、一年ほど前までセフレがいたんですね。二年くらいの付き合いで、と言っても二ヶ月に一回くらい会う程度の仲だったんですが。セックスのほうが厭きてくると自然に疎遠となって、最近では連絡も取らなくなっていました。

ところが、つい先日、彼の妻という女性からメールがあって、自分の夫との不倫関係のことはバレているから、連絡先を教えろ! と強硬にいってきた。彼に問い合わせると、スマホを盗み見られ、二人のやりとりや画像やらのデータをすっかり抜き取られてしまったというんです。

こちらは彼に対して軽くセフレとしか思っていなかったので、相手が女性と結婚をしていることを気にも留めていなかったんですが、これ、法律的に問題があるんでしょうか。奥さんはこちらが連絡先を教えなければ、出るところに出てやる!くらいの勢いなんですが。

私は会社とかでカミングアウトしていないのでバラされたら困るし、かといってお金を要求されてもそんな余裕はないし…。

アドバイス、よろしくお願い申し上げます。

 健介(三十五歳)」

 

健介さん、こんにちは。セフレの一人に過ぎなかったのに、奥さんからギャーギャー言われて災難ね。せめて本気の恋人だったら、あきらめもつくのに。

出るとこに出る、ってことは、その奥さんは、ダンナとの不倫(というかセフレ)を理由に、慰謝料請求の裁判でもなんでも起こしてやる!ってことなのかしらね。

ところで、慰謝料請求って、「不法行為に基づく損害賠償請求」なのよ、法律的に言うと。

で、不法行為って何かっていうと、故意や過失で、相手の権利を侵害して、損害を与えること。世の中で一番多い不法行為は、交通事故かしら。

で、健介さんは、その奥さんのどんな権利を損ねているのか、いないのか。

えーと、まず、奥さんにどんな権利があるか、ですが、奥さんが、愛人を訴える、という、「不貞慰謝料請求」ができるのは、不貞が、「婚姻共同生活の維持という権利」を侵害する不法行為だから、っていうのが、最近の最高裁の立場なの。

前はね、侵害されるのは、相手の貞操保持に対する信頼権のようなもの(要するに浮気しないってこと。前回説明したと思うけど、夫婦はお互いに貞操を守る義務があるから、相手に貞操を守ってもらえるはずの自分の権利が侵害されたっていうものね。法律的には夫権とか妻権とか言ったりする。)という考え方が強かったんだけど、最近は、そういうのだけじゃなくて、「平和な夫婦の共同生活」に介入して、それを壊す行為が、不法行為だ、っていう考え方が強くなってきているようなんです。

なんでこんなこと説明するか、っていうと、男性の「貞操」を、男性が破れるのかどうなのか、とか、同性間の性交渉が、奥さんにとって貞操保持の期待を裏切るようなものなのか、っていうと、なんとなく、そうじゃないんじゃない?って感じがするよね。ダンナが実はゲイで、男性とも性交渉していたときに、女が、浮気された!って思うのか? モエ的にはなんか違うんじゃね?って思う。だって、浮気って、自分としかしないはずのことを他人ともされるからイヤなんだよね? 同性間だと、自分とはしないことしてるわけだしねえ。

でも、結婚という共同生活の「平穏」や「平和」を破壊する行為が不貞だ、不法行為だってことになれば、同性の性交渉も、夫婦の信頼関係を壊すだろうから、不法行為になる可能性が強くなってくるように思う。「不貞」っていうのは法律上の概念だけど、いったんこうと決まったら動かないものではなくて、社会の変化に伴って、変わっていくものなのです。

今後、同性婚が認められたら、カップルの片方と不倫すると、関係者が全員同性でも、不貞に基づく慰謝料請求とかいう話になるのかも。いや、なるわよねえ、そうなったら。

最近の裁判例では、元愛人(今は愛人じゃない)がダンナと深夜に会っていた、という事実だけで、不貞の再開を疑わせるのに十分、家庭を壊すということで、不法行為が認められたものもあるみたい。極端な例だと思うけど。

ということで、単なるセフレだし、同性の性交渉だから、不貞じゃないのよ~大丈夫よ~そんなの~。とは言えず。裁判になって、健介さんのセックスで家庭を壊したと裁判所が判断したら、慰謝料の支払いが認められる可能性があります。しかし、健介さんのお話みたいな、同性間の性交渉を理由にした不貞慰謝料請求の事案、モエはみたことないけど。

それにさ、健介さんは2か月に1回会う程度のセフレだったんでしょ。その人、他にもセフレいるんじゃない?ぜったいいるわよ。最近連絡とってないなら、家庭が壊れたのは、その、別のセフレのせいよ~。

そもそも、健介さんに家庭を壊されたっていうより、ダンナがバイだったことが分かって家庭が壊れたのよね、ほんとに壊れたんだとすれば。

あ、それに、不法行為は、「故意又は過失」での権利侵害だから、健介さんが、奥さんがいることを知らされていなかったとか、ゲイだから独身、とか言われてたんなら、不法行為じゃないことになるの(奥さんを気にも留めていなかったということでしたが、念のため。)。

何が言いたいかってことだけど、健介さんの立場は、法律的には問題がないわけじゃないけど、健介さんのお話をもっと弁護士がよく聞けば、奥さんの言ってることに反論できて、撃退できる可能性があるんだと思う。

弁護士だったら、やりようによっては、健介さんの個人情報をこれ以上奥さんに渡さない形で交渉できるから、奥さんが職場に来そうだったら、早めに弁護士に相談した方が良いと思いますよ~。

ではまたね。(続く)

 

イラスト・PIPI-BLUE

*モエ先生に法律の相談をされたい方は、とりあえず、アデイの伏見営業の時にご来店いただいて、お話し聞かせてください。お待ちしております!(編集)