パヨクのための映画批評 13

おばちゃんの深情け映画~「ボルベール~帰郷~」(”Volver”、スペイン、2006年)

世界的な映画監督ネエさんと言ってもたくさんいて、意見がまとまらないのですが、スペインのペドロ・アルモドバルさんを抜きには語れないでしょう。ちなみに、スペインと言えばもう一人のネエさん監督、反カトリック・パヨクのアレハンドロ・アメナバルさんも忘れてはいけないがそれは次回お話しましょう。

80年代初頭のスペインは、フランコ政権による権威主義的な体制が終わったばかり。当時のアルモドバルの映画「バチあたり修道院の最期」(1981年)には、あか抜けないマドリードの街が映し出されています。そんな地味で保守的だったスペインを、どぎつい色彩と、人間の欲望や暴力、歪んだ愛で表現し、何だか分かんないもん観たという作品を連発したアルモドバルさん。80年代半ばにEC加盟して勢いづいたスペインは、92年にはバルセロナオリンピック(マスコットであるコビーのアニメが製作され、その中で日本人は「出っ歯で吊り上った糸目」として表現されていました。えねえちけえで普通に放送してた)を経て、パヨクのサパテロ政権が同性婚をさっさと認めてしまうところまで来てしまいました。

かつて「マクドナルドのある国同士は戦争しない」と言われた時代(IT革命の頃よ!20世紀末)がありましたが、今や「同性婚認めている国同士は戦争しない」と言うべきでしょう。スペインが自由で明るい国に変わると、アルモドバルさんは見やすい作品を作るようになった気がします。

今回は、世間的には「女性賛美映画」と言われているらしい、おばちゃんファンタジー映画の佳作、「ボルベール」について考えてみたいと思います。母娘三代の確執と和解の物語だよ!

さて、彼の映画って、「おばちゃんの踏ん張り」がテーマの映画とそうでないのがあって、私には明確よ、彼が「男のぐだぐだ」を描く作品は全く面白くない!  彼の映画の中で、戯画化されていたり、或いは極端に理想化されていたりする女性の姿は、遠い存在だからこその憧れと愛情を以て描かれている。

十数年前の火事で母を喪ったライムンダは、娘パウラと夫パコと暮らしている働く母親。ある日、パウラがとんでもねえ事件を引き起こし、ライムンダの中で止まっていた時間が動き出す。そしたら、亡くなったはずの母が出てきたッ!?  ぎゃー!  あ、ホラーじゃないです。

劇中、ライムンダが「ボルベール」というスペインの歌を歌うの:どこかへ去った大事な人のことを待って田舎で生きてたら、もう20年経ってしまって老けた私、思い出に浸り、今日も涙にぬれる。このスペイン演歌をベースに、「世界対あたし大戦」の変奏形、「おばちゃんにも人の情けがあるんだ」が描かれる。

バイト先の古参パートのおばちゃんのキメ台詞「仕事はねえ、つらい思いして覚えて行くんだよっ!」で若造叱った後、一緒に飲みに行って人生諭すっていうやつに似てる…私も最近職場でそんなノリだ。でもさ、パヨクなんぞに人生諭されたら翌日会社来ないよね普通。

アルモドバル映画って割と女性の和解や友情、支え合いに重点を置いている作品が多いような気がします。これ、物足りない人は多いかもしれません。でも、「ウィンターズボーン」(2010年)や「フローズン・リバー」(2008年)でもおばちゃんの踏ん張りに見どころがあるが、現実が重た過ぎて近寄るのがしんどい。それに、現実の女性だったら、特に上手く行ってなかった母娘は、そう簡単にお互いを許したりはしない。よくいるよね、デパートとかで、互いを口汚く罵り合いつつも一緒に買い物している母と娘…彼女らなりに、来るべき「世界対あたし大戦」の練習をしつつ、互いを戦友として認め合ってる。スケールは小さいが真剣勝負の壮絶な戦いよ。男にあれは無理。

なので、母親が消えたり、厳しかった母が弱ってその戦いから退くなんて、娘にとって一番許せないこと。それは怒りになるの。ライムンダはどうしても母に言えなかった過去があり、母に「置いて行かれた」という恨みがあった。自分の娘がトラブルに陥った時、母として、そして母と上手く行かなかった娘として、その思いに初めて向きあうことになるの。

現実には肉親との確執って、分かり合いたくないし、赦したくない気持ちに引き裂かれますよね。アルモドバルの「おばちゃんの深情け」映画は、そんなあなたに「落ち込んだり腹が立ったりしていても、あんたは大丈夫!  おばちゃんも大変だけど、どっこい生きてるよ!」と根拠なく励ましてくれる。そんなの甘いのかもしれないけど、アルモドバルさんはゲイだから、実際の女性とは距離があるからこそ描けるおばちゃんファンタジーなんだと思う。フィクションは問題を解決してはくれないしヒントもくれない。でも現実にはそうならないからこそ、映画の中だけでも和解して、支え合って、笑ってみる、というのはどうかしら。意外にいいわよ。

 

執筆者・竹美

ほぼカムアウト状態の会社員。九州のパヨクな家庭に育ち、パヨク思想に染まっていることに無自覚なまま二十歳を迎え、周囲の同級生が順当に就職活動を開始した頃、全然やる気になれず焦って大学院へ逃亡。それが、「企業=金儲け=巨悪」だと信仰していたためだと自覚したのはその10年後。「思想転向」のリハビリ過程で、「真っ先に悪を告発する紅衛兵」の素養を小学生位のときに発揮して同級生にウザがられていた記憶もフラッシュバック。

このコーナーでは、映画を通じて「私やあなたというパヨク」の滑稽で哀しく、正しくて誤っている物語を発見していきたい。