パヨクのための映画批評 15

ジャンル無用のヒーロー映画~「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」(”Lo chiamavano Jeeg Robot”、2015年、イタリア)~

凝り固まった世界観を破壊するために20世紀からやってきたヒーロー達が、痴話げんかしたり仲直りするアメリカ映画が全盛の今、返歌のように、イタリアから一風変わったヒーロー映画が出てきました。完全に「男子」目線のヒーロー映画でありつつも、男性優位社会の問題性を痛々しく描いている映画として、本作をパヨ映で取り上げるべきと考えました。

人生諦め切った泥棒、エンツォは、ケチな犯罪で逃亡中に謎の物質によって超人的パワーを身につけてしまう。そして、日本のアニメ「鋼鉄ジーグ」に耽溺する少女アレッシアとの出会いが彼の人生を変えていく。

最初20分くらい、一体何がどうなっているのか、説明が少なくて全然分かりません。え?何何?? と違和感を覚えていると、やがてお話に必要な情報が丁寧に拾われていく中で、男性優位社会としてのイタリアが痛烈に浮き彫りにされます。余談ですが、エマニュエル・トッドさん著「「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告」によれば、日独伊三国は(アジアもほとんどそうだけど)、男尊女卑的なところが共通しており、一様に出生率が下がっているそうな。トッドさん本人はこの本の中で「私は左翼です」と言っているけれど、容赦ないドイツ批判が笑えちゃう。日本で左翼だったら十中八九ドイツ好き(右翼は概ねドイツ嫌い)よね、この点が日本と欧州の「左翼」の違いを知る鍵のように思います。

最初の方は、麻薬売買の仕事中にアレッシアの父親が殺害され、仕方なく彼女の面倒を見る羽目になったエンツォ・・・という、「無骨な男と少女の交流」という、「レオン」以来の定番ネタを使ってはいるのですが、そう簡単ではありませんよ! 韓国映画「花びら」(1996年)に次ぐ痛みだったと言えば・・・っつってもみんな知らないわよね・・・エンツォ、暇な時はアダルトビデオをぼんやり観るだけの薄汚ぇケチなチンピラ男でね。スーパーパワーを手に入れても、最初にやることときたらATM強盗です。2回目も強盗! このどこに共感したらいいのか分かんない、どろっとした目をしたおっさんに、少女(でももしかして成人?)は、「あなたは司馬ひろし。その力で父さんと人びとを救って!」「女王ヒミカが」「アマソの剣が」とかもう、話聴いてないヲタの会話全開で、全然分かんない話をしまくる。ああ・・・中学時代、同じクラスに私が話せる子が一人くらいしかいなかったあの頃、同級生のT君、延々私の知らんアニメの話をしていたなあ・・・最初はうっとおしかったのに、気がついたら私も感化されてアニメCDとか好んで聴いてたなあ・・・という感じで、エンツォが厄介払いしても、彼女はまた戻ってきて、延々アニメの話をしてくる。実はエンツォも彼女に少しずつ感化されて、盗んだ金でそのアニメのDVD買っちゃうんだけどさ。

さて「ジーグ」と現実をごっちゃにしているアレッシア、父親には「母親が死んでからあのアニメの世界に逃げ込んでしまった」と言われているのですが、彼女がヒーローアニメの世界に逃げ込んでしまった理由は、母の死だけではないこと、その過去がトラウマとなって今なお彼女を苛んでいるという描写が随所で出てきます。アレッシアは、アニメのヒーローへの愛と区別つかない形でエンツォに愛情を示すのですが、エンツォは最悪の形で愛情を返してしまう。そこ激痛。激痛ですが、激痛として描く必要がある箇所だと思いました。どうしようもなく荒んだ現代社会という時空で、アニメの中ではなく現実の中で、救われたかったのはアレッシア自身。

さて、ヒーローものに必要なのは、主人公側の暗い過去だけじゃなく、異様にテンションの高い悪役よ! 本作でも、憎たらしい悪役、ジンガロがやりたい放題やってくれます。そう来なくっちゃ! 最後の方、何かもう「ロック・オブ・ザ・エイジ」のトム・クルーズみたいになってくる。でさ、ヒーローものアニメ・特撮、ディズ界、果ては韓国大河ドラマの悪役って、妄想に浸ると何故か哄笑しだすのよね。あれ何なんだろう、誇大妄想で楽しくなってきちゃうんだろうか・・・あたしも最近パヨク・マインドを覆い尽くす勢いで誇大妄想に取り憑かれつつあるのを感じるので、いつかヒーローに退治されるかもしれない。そして迎える最終決戦。

本作、始終地味なので、ヒーローもの映画であることを完全に忘れさせてくれます。と同時に、ラストシーンで、私達がいて欲しいと心から願うヒーローとは、完璧からはほど遠い、ダメな私達のうちの一人なのであり、そして、ヒーローの孤独な戦いは終わりのない贖罪なのである、とヒーローもの映画の定番も押さえています。主演男優が歌うテーマ曲も哀しげで悲壮感たっぷりでああすごくタイプ。

ゲイ目線で言えば、主演男優のガタイ、ひたすら食ってるひげ面男など、熊好き外専のみんなも存分に楽しめるシーン満載の本作、今のところ今年一番の映画です。あーもう一回観なきゃ。

 

執筆者・竹美

ほぼカムアウト状態の会社員。九州のパヨクな家庭に育ち、パヨク思想に染まっていることに無自覚なまま二十歳を迎え、周囲の同級生が順当に就職活動を開始した頃、全然やる気になれず焦って大学院へ逃亡。それが、「企業=金儲け=巨悪」だと信仰していたためだと自覚したのはその10年後。「思想転向」のリハビリ過程で、「真っ先に悪を告発する紅衛兵」の素養を小学生位のときに発揮して同級生にウザがられていた記憶もフラッシュバック。

このコーナーでは、映画を通じて「私やあなたというパヨク」の滑稽で哀しく、正しくて誤っている物語を発見していきたい。