「パヨクのための映画批評」16

おとこおんなのボクがマッチョになるまで。 

「ムーンライト」(”Moonlight”、アメリカ、2016年)

今日は、2017年のアカデミー賞で見事、最優秀作品賞を受賞した映画「ムーンライト」について考えてみましょう。

LGBTその他の端くれとしては観なければならないと感じた映画でした。だって、ゲイの男子の成長物語、しかもアフリカ系(黒人なんて言い方、サベツよ! でも実はパヨ映でもブレまくってるのアアアア(Noir))の人しか台詞が無い、そして周囲には貧困とドラッグが溢れ…正直全く売れなそうな題材で一本勝負かけて見事勝利したという、これ以上なく、オバマ期へのさよならと愛を込めて賞を贈られた映画のはずですもの。

お話は、マイアミの貧しい地域で母と二人暮らす少年シャロンの成長の物語。

まず、ゲイの人あるあるから始まる。「おとこおんな」、私も言われてましたよ。いじめ体験はありませんが(担任教師の紅衛兵でしたし)。でも、本気でいじめられてた人にとっては観てられないつらいシーンかもしんない。そこへ、映画の世界は時間がないから、直ぐに救世主が現れるの。待ってました、フアンおじさまの登場です!

フアンおじさま、むっつり押し黙ったシャロンに何故か親身になる。麻薬の売人ですし、きっと外の世界では色々悪いこともしてんだろってのが冒頭で明らかなのですが、外れモノの男子にはどういうわけだか優しくしてやりたくなってしまう。これがねえ…いいんだわ。

実は私、この映画を観て、中学校の先生が学年集会で話してた体験談のことを思い出したの。その先生はコワモテの生活指導担当の美術の先生だったんだけど、きっとねえ・・・絵なんかやりたい男子なんて昔は疎外感感じてたんだろうな・・・その人が子供の頃に、知らない怖そうなおじさんにやけに優しくしてもらったという話をしていたの・・・まぁ、当時の九州の中学教師ですからそれなりのパヨクぶりを発揮してはいたけれど、その先生が「外では一体何してる人か分からなかったけれども、自分には優しかった」と証言していたのを思い出したわ。ムーンプリズンパワーでマッチョ化する前の子供シャロンがそういう場面に出くわしたのが興味深かった。

フアンおじさまの存在ってさ、子供の頃に、誰にも守ってもらえなくて一人で耐えてたような男子にとっては一種の神話なのかしら。例え悪人であっても。そういう人に出会えていたら人生もっと違ってたのになあと思った男性の観客結構いるんじゃないかと思ったが、ダメ押しでフアン様ったら「Faggotというのはゲイの人を悪く言う言い方だ」って殺し文句で、世界のオネエの心臓を射抜いた。演じたマハーシャラ・アリさんはムスリムだそうで、その彼にオスカーが行ったことも画期的でした。

高校時代のシャロンもまた体が細くて、相変わらず虐められているし、お母さんともますます上手く行かない。ちなみにこのお母さんの毒母ぶりが控え目に描かれているのが本作の救い。もうそこドロドロに描いたら辛くて観てられない。原作者と監督は、自分の母親のことも念頭においてお話を作ったと証言しているので、そこを描くと却って話がぼやけてしまうと考えたのではないだろうか。

ちなみに役者もすごい、少年シャロン、子供シャロンと目が同じなのよね。そして、ここら辺で、何故か子供の頃からシャロンについて回る変な男子との関係が意味を持ち始めるの。あの月夜の浜辺で…でもね、その変な男子との決裂でシャロンの人生は変わってしまう。

そして数年後…出ました! 「いじめられていたひ弱なゲイの少年が、大人になってマッチョ男性になったけど、目だけキョドった少年のまま」という、マッチョオネエの「ガタイにも涙」を思わせる雄姿(おすがた)…人に馬鹿にされないために、「いっぱしの男」になるためにと変身したのよ。ベッドで一人寝している大人シャロンのセクシーな肉体。そのガタイで昔の全てを吹っ切りたかったんでしょう。でもそれは、シャロンが反発したフアンと同じ、ドラッグの売人になることだったの。ドラッグは母親を傷つけ、自分を苦しめた元凶。リハビリ施設で、すっかり気弱になったお母さんとお話しても、愛情が何だかちぐはぐで。

そんなときにねえ、例の妙な幼馴染から電話来ちゃうのよ! あーん…

本作は、月光を受けて不思議な色に輝く物語。あの月夜の晩の浜辺に失くしてしまった落としものを彼は取りに帰ってきた。子供のときの自分はずっとそこで待っていたのね。音楽もいい。

大きくなったつもりでも、思想転向してるつもりでも、実は一歩も足を踏み出していなかったと知ってがっかりする? それともうれしい? 特に明日への希望を描くでもないのに、さわやかで新鮮な映画でした。

 

執筆者・竹美

ほぼカムアウト状態の会社員。九州のパヨクな家庭に育ち、パヨク思想に染まっていることに無自覚なまま二十歳を迎え、周囲の同級生が順当に就職活動を開始した頃、全然やる気になれず焦って大学院へ逃亡。それが、「企業=金儲け=巨悪」だと信仰していたためだと自覚したのはその10年後。「思想転向」のリハビリ過程で、「真っ先に悪を告発する紅衛兵」の素養を小学生位のときに発揮して同級生にウザがられていた記憶もフラッシュバック。

このコーナーでは、映画を通じて「私やあなたというパヨク」の滑稽で哀しく、正しくて誤っている物語を発見していきたい。