パヨクのための映画批評 22

おばちゃん大国、韓国の娯楽映画

~「怪しい彼女」(”수상한 그녀”、韓国、2014年)~

 

私は就職活動から逃げた挙句、何もできなくて22歳ホモ・・・だったので、当時それなりに読めてた韓国語のテストの点数のみで大学院に入院し、北朝鮮のことを勉強した、という迷走の20代を送りました。その後縁あって韓国に住むことができ、韓国語も学びました。当時はノムヒョン政権。韓国も「アカ」になったと言われ、私にとっては知らず知らずのうちにパヨク性を伸ばしてしまった時期ですね。当時の野党党首は、ついこの前、シャーマニズム入信が発覚した女性の元大統領。あの感情あんまり無い話し方は昔から変わっていませんが、彼女に関しては壮絶な人生も含めてとても切ない。ところで、今年は中年女性の暴走という意味では当たり年。暴言議員さんや、満たされぬ愛への渇望が憎しみに変わってしまった女優さんまで、全てを曝け出して、私たちに人生の苦悩と滑稽さを教えてくれているの。

さて、今回は、「嫌韓ブーム」の今、しぶとく立ち位置を確保している韓国映画から、「怪しい彼女」についてお話したいと思います。本作は日本でもリメイクされたそうですから結構人気だったようですね。

シングルマザーとして息子を育て上げ、今は息子一家の口うるさい姑、そして、老人向け施設のカフェの店員をしているオ・マルスン。誇り高いマルスンは、がむしゃら人生の中で色々な人を傷つけ、疎まれてしまったことを知り、落ち込む。そんなとき、魔法で突如、20歳に若返ってしまった! そして、昔の夢だった歌手デビューをしてしまう・・・スーパー・ババァ・パワーで高度経済成長期を駆け抜けた女が老境に差し掛かってふと立ち止まる映画なのか…いや、立ち止まりはしないな、韓国のおばちゃんは。

ゲイ的にとにかく惹き付けられるのは、マルスン(ちなみに~スン(順)とつく女性の名前は韓国では一昔以上前の名前です。そう言えば女性元大統領を陥れた女性の名前にも「順」の字入ってる)の罵詈雑言。のっけから別の老婆との口げんかがすごすぎて笑っちゃう。韓国ってサベツは日本以上の厳しさと露骨さがあるのですが、何か言われたり、押しのけられた人たちも黙っちゃいない。「ナハンテド・ハルマリイッタ」=「私にだって言い分がある」という感覚。日本人だと逆ギレにしか見えないのですが、その騒々しさが韓国映画の演劇的なおもしろさにつながっているように思います。日本語に存在しない罵倒語の豊富さときたら。訳しても面白くないんだけど。

ところで本作には、韓国でも深刻な高齢化と老人のケアの問題が色濃く描かれています。韓国人の大好きな銭湯(沐浴湯(モギョクタン))で、老婆が1人着替える様子を若返ったマルスンが見つめるシーンはものすごく切ない。マルスンの虚勢の後ろにある寂しさを捉えるわけです。もうこれで結構涙腺が・・・。

しかしね、直ぐ涙乾くわよ。韓国の老婆たちがやるすごい行動のひとつに、「小さい男の子に「「コチュ」を見せてごらん」と言う習慣がある」と、韓国に住んでいた頃に現地ゲイに聞いたことがあったの。嘘だろと思ってた。「コチュ」=とうがらし、は、子供の男性器の意味。そしたらマルスンが1歳とかの男の子の股間をつつくという衝撃のシーンが。今はともかく、実在する習慣だったのね…

心は老婆、見た目は二十歳の主人公が次々にやらかす老婆行動から、韓国って他人との距離が近くて、見知らぬ人に話しかけるのも平気ということが分かります。そして大阪のおばちゃんのように、若者に飴をやろうとするの。私は韓国に住んだ後に初めて大阪を訪れたのですが、第一印象は「あ…庶民がいる…」というものでした。「庶民」は開けっぴろげで、常に家の中にいるみたいに平然としています。

ところで、2000年ごろの韓国のポップスは、日本で言ったら70年代にいきなりラップとテクノ来ちゃったみたいなちぐはぐ感が非常に面白かったものです。最近はK-Popと言われて洗練されてしまいましたが、本作では老婆が昔歌ってたと思しき「懐メロ」を新しいさわやかバンド曲にアレンジして聞かせてくれます。そうよ、もちろん路上ライブするのはおしゃれなホンデ地区。そして、韓国のサブカルチャーは、そういう風に「一昔前」を今風に読み直して楽しむという段階まで、この十数年で一気に変化したのですね。

老人が若返って昔できなかったことをやるというテーマは、映画的には鉄板ネタ。歌手として生まれかわったマルスンは、昔の歌を現代のアレンジで歌いながら、過ぎた時代・・・韓国がまだ貧しかった時代のこと、自分も貧しかったこと、貧しさ故に、息子を育てるために卑怯な真似をしたこと、夫が出稼ぎ先で死んだ時のことなどを思い出します。韓国からドイツに出稼ぎに行った人たちというのがいるんですね、これは知らなかった。韓国の中にある高度成長期の記憶というのは、主に「貧しさと苦労の風景」のようです。そして、映画の中でも指摘されているように、貧富の差の問題が今なお横たわっています。

加齢や格差や社会階級等の問題に直面するおばちゃんが泣き笑い激怒しながら、最後は「生きててよかった」と言ってのける強引さ。「生き抜くことに、きれいも汚いもあるかい!」と言わんばかりに暴れ回るスーパーババァ、マルスンと一緒に韓国社会を覗き見する映画です。

韓国社会をけなす本が書店にならび、ザマミロ・メシウマ嫌韓動画が垂れ流される日本において、韓国のおばちゃんの暴走は単なる騒々しさでしかないのかもしれないけれど、「隣の国なのにこんなに違うんだ!ウケルー」と好奇心を持つことを忘れずにいたい。「ジャパンすごい」の洪水の中で正気を保つことはそんなに難しくないはずよ。

 

執筆者・竹美

ほぼカムアウト状態の会社員。九州のパヨクな家庭に育ち、パヨク思想に染まっていることに無自覚なまま二十歳を迎え、周囲の同級生が順当に就職活動を開始した頃、全然やる気になれず焦って大学院へ逃亡。それが、「企業=金儲け=巨悪」だと信仰していたためだと自覚したのはその10年後。「思想転向」のリハビリ過程で、「真っ先に悪を告発する紅衛兵」の素養を小学生位のときに発揮して同級生にウザがられていた記憶もフラッシュバック。

このコーナーでは、映画を通じて「私やあなたというパヨク」の滑稽で哀しく、正しくて誤っている物語を発見していきたい。