あっきー★らっきー水曜日 その5

「新宿二丁目を訪れたら」

 先週で、アデイの水曜を担当してから、10回目の営業となりました。言い換えると、ほんの「2か月ちょい」という短い期間。「まだまだ、ボクはひよっこです!」と可愛く言い放つには、あちこちオヤジ化が激しく悲しいですが、これほど何かを吸収する経験は久しぶりです。

 飲食の仕事は、学生時代にいくつか経験しました。しかし、就職後の凡庸サラリーマンの人生では、接客に携わることなどありませんでした。これまで、界隈では野放図に飲んだくれるばかり。「くだをまいて、暴言を吐いて、ゲロも吐く」といった「楽しんだ者が大将!」と言わんばかりのバカな若気は、思い返す度に赤面する限りです。それが今は、二丁目の神様(誰それ?)に、こう言われたつもりでいます。

「あんたさ、ここに出入りするなら、ゼロから出直しな!」

 そして、行く先々の店員の細やかな所作を見ては、我が身を振り返る日々です。

 友人のあるママは、ショップ店員やファーストフードなど、いろいろな仕事を経験したそうですが、「店子の仕事が一番タイヘン!」と言っていました。確かに、実際にカウンターの中に入ってみると、やることがいっぱい! ドリンクを作り、下手なトークをし、 洗い物やら、会計やら……。特に、アデイでは食事を出すマスターやママが多く、同時に複数のことをこなせないボクには、みなさんが千手観音のごとく手が動くように思えます。

 また、取り囲むようなアデイカウンターは、酒関係だけでなく、調理器具も取り揃えられ、そこはコックピットさながら。すべてがだいたい手の届く場所にあるという、絶妙に配備されている店なんです。確かに、深夜に感じるトリップ感は、お客さんを「巻き添え」にした小旅行かもしれないですね(笑)

 最近は、常連の方々に加えて、仕事でこれまで出会った方や、10代の頃を知る地元の友人も訪れてくれます。そして、新宿二丁目が初めての方も、新宿二丁目以外の場所では会わない方も、自由に交流しています。そのようなスクランブル交差点のような状況を前にすると、ちょっと感動を覚えます。カオスからその夜限りの秩序が生まれ、それをみんなが自然と共有する空間は、アデイの特徴ですよね。

 これから、アデイを始めとするゲイバーや、新宿二丁目を訪れることが初めてという方へ。ルールやマナーについて、気にし過ぎることはないです。常識を超えるものは何もないはずですし、ちゃんと家まで帰れます(笑) だけど、バーという場所は、自宅とは別にある「超私的な場所」だと思います。上着とかいろいろ脱ぎ捨てて、みんな下着一枚になっている。もちろん、実際には脱ぎません(脱いでくれてもいいけど)。ただ、リラックスすればいい。緊張が抜けてくると、頭にいろいろ入ってきて、ぐるぐる混ざったり、ぱちんと回路が繋がったり、面白い体験ができると僕は思っています。

 ちなみに水曜日は、(初めて言いますが)「訪れるとラッキーになるBAR」をモットーに掲げています。

「あのう、具体的に、どのあたりがラッキーなんですか?」

という質問をされると、ふわっと決めたことなので、困ります。僕にスピリチュアルな力があるわけでも、1等が熱海旅行の福引きをやっているわけでもないです。でも、「裏山でエロ本拾った!」くらいの大きさのラッキーは、みなさんにお持ち帰りいただきたい。それは僕だけによらず、「そうだ、アデイに行こう!」と決めた時点で、すでにお客さんの内部から発しているケミストリーです。

 

あっきー(水曜担当)

【プロフィール】 1975年埼玉生れ。

出版社に16年間勤務し漫画や小説などの編集に携わったのち、

なし崩し的にフリーに。NPO法人「企画のたまご屋さん」では、出版プロデューサーを務める。

https://twitter.com/shiruga_man