「あっきー★らっきー水曜日」その7

男性作家と過ごした夏休み

 久しぶりに、古巣の会社の同期の女性よりメッセージがあり、僕もお世話になった作家を担当することになったと聞きました。「お互いタイヘンよねー」と情報共有したその方は、ミステリの世界では超売れっ子の「男性的」作家です。

 渦中にいる人は、「文壇」を自称しない気もしますが、それっぽいイメージがあるとすれば、重鎮ミステリ作家の「流儀」から、まんま体感できることと思います。大物作家から連想するものといえば、なんでしょうか?

——パーティー、銀座、ウイスキー、葉巻、美女……

 あれ、ちょっと偏ってるすかね?

 打ち合わせと称した作家との会食は、銀座方面にセッティングされることが多く、その後はクラブというところに流れます。銀座とは恐ろしい土地で、座っただけで4万とかする店もあり、そこへ他の担当編集者と連れ立って行くと、金額は絶叫モノになるわけです。後日、請求書(ママの直筆お手紙つき)が送られてくるわけですが、会社の歯車に徹していた僕は、その有無を言わさぬニュアンスを崩さないよう、経理に回していました。

「作家さんがお楽しみになった料金ですよー。きっちりお支払いいただきますねー」と。

 作家が集まる店では、他社の編集者に連れられた担当作家と鉢合わせ、「やべ!」となることもありました。でも、横の連帯も強い「文壇」ですからそこは穏便に。パーティーや銀座は、情報交換の場としても機能していたと思います。深夜、銀座の小さなクラブでは、他のお客と入り交じり、絶妙な酩酊空間に変化します。次の日も出社する平日でも、みなさん遅くまでお構いなし。あの何かが生まれそうな、贅沢な空気は好きでした。これ、どこかアデイの感覚に似てますね。

 また、作家も人間ですから夏休みを取りますが、こちらは忙しい季節になります。大物作家の夏といえば、さてなんでしょう?

——別荘、海、ヨット、温泉、愛人……

 ということもあるかもしれませんが、僕が避けては通れないものがありました。

 それは、ゴルフ。

 打つ系スポーツはからっきしダメだった僕が、一生やるまいと思っていたのがゴルフです。前述の同期も担当するかの作家は、房総に別荘があります。お盆やゴールデンウイークなどにはそちらに滞在するので、各社の編集者も馳せ参じるわけです。土地柄、ゴルフ場は多く、やはり連日のごとくプレイに繰り出します。僕は一大決心をし、(自費でね)ゴルフセットを買いました。そして、なんとなーく打ちっぱなしに行った程度で、いきなりのコースデビューをすることになります。あの時のことは、もう一生忘れません。

「最初だから、一緒に回って教えてやるよ」

 などと言う作家先生。一応、「練習してきましたっ!」と言った僕をもっとデキる奴と思ったのでしょう。しかーし、派手に振り回すだけで、全然当たらない。当たってもその辺に転がった程度。ダフったり、バンカーいったり、どっかいったり……。

 穏やかだった作家の声は、すぐに「ほら、打ったら走れ!」と荒げられ、しまいには「おい、ふてくされるなっ!」と怒鳴られる体たらくでした。

 当時、伝統文化とも言うべき文壇の体質に、軽い反抗心がありました。男性中心のヒロイックな会話や、作中の「ざっくり峰不二子」な女性描写など、違和感に触れると作家への熱が冷めてしまう。だから、気持ちが離れないよう必死でした。もちろん、素晴らしい原稿に圧倒されたときは、そんな細事はふっとんじゃいますが……。

 きっと、文芸だけでなく、映画や演劇などのジャンルでも、同様のひずみはあるはずです。ひいては、他の分野でも、他の文化や時代でも然り。そして、そのバイアスこそ新たなものが生まれる土壌です。アデイは、そんなバイアスを感じられる場所かもしれません。僕も「何かが生まれそう」を共有できたら、と思っています!

 

あっきー(水曜担当)

【プロフィール】 1975年埼玉生れ。

出版社に16年間勤務し漫画や小説などの編集に携わったのち、

なし崩し的にフリーに。

NPO法人「企画のたまご屋さん」では、出版プロデューサーを務める。

https://twitter.com/shiruga_man