パヨクの為に映画批評 33

シリアルキラー界のジャンヌ・ダルク

~「モンスター」(“Monster”、2003年、アメリカ)~

パヨ映を書かせていただく中で、自分の色々な欲求を再発見する場面が結構あるのですが、私は根っからの昼ドラオネエというのが割と最近の発見です。傷つかないと人生じゃない、涙流して強くなる、と思い込んで生きてます。そんな私ですので、世界を革命しようと熱く生きて散った女の”世界対あたし大戦”みたいな映画に引き寄せられる。今回は、世界と男と正義に戦いを挑んで散ったシリアルキラー界のジャンヌ・ダルク、アイリーンの愛と破滅の物語を紹介したいと思います。

時代は80年代末、ホームレスの売春婦のリーは、絶望して自殺を試みるも、人生最後の一杯を求めて地元のバーでビールを飲む(あー、そのヤケクソ感からして好きだよ…)。そこで知り合った少女セルビーとデートを重ねることになるが、セルビーの家族に疎まれた2人は家を出る。金のため、仕方なく売春婦に戻ったリーだが、リーを暴行しようとした客をはずみで殺してしまう。

もうね、初っ端からくらーい映画なのよ。子供時代の回想から始まるんだけど、「今はこんなにバカにされたり無視されているあたしだけど、いつかは…」って夢見るプリンセスの寝言ナレーション。そして「ある日、夢を見るのを止めた」という言葉と共に、現在の自殺しようとするリーの絶望が画面いっぱいに広がる。主演のシャーリーズ・セロン様の顔いっぱいに哀しみが広がる…

最初ね、バーでセルビーがリーに話しかけるんだけど、「あっち行け!レズが!」とリーはキレる。そしたらセルビーは「私は誰かと話をしたかっただけなのよ」と愚痴るの。演じたクリスティーナ・リッチがまたすごい、髪型も服装もダサく、笑うときは変な引き笑い、バーに来たって他のイケてるビアン連中は相手にもしてくれない。家に帰っても、娘がレズビアンだなんて認めたくもない家族たち。そんな孤独なセルビーと、絶望の淵に立ったリー。二人が寄り添うのに時間はかからなかったわ。ローラースケート場でのデートで初めてキスするんだったかな。BGMで「Don’t Stop Believin’」が流れる…この歌、元々80年代の歌だったのね。私は、オバマ期最高のドラマ「glee」で初めてこの歌を知ったので肯定的で明るい応援歌だと誤解してました。本当は、打ちのめされた人々に寄り添う、哀しい、場末感ハンパない歌だったのね。そんなさぁ、場末感すごい中で愛を確かめ合うとこまで、わずか15分くらいなの。観客は、その盛り上がりが転落の序曲なのだと知っているのでもうそこで全てが昼ドラ乗りの私はじゃんじゃん涙が出る。

リーが最初に男を間違って殺しちまうシーンは痛い。売春婦を買ってまで「女」を痛めつけようとする客の薄汚さとちっぽけさ、こんなやつ、死んじまって構わねえと思わせてくれる。そして殺した後、リーはぎゃああああと喚くの。そこで彼女、鬼!婆!変!化!その後は愛の逃避行の資金のため殺人売春婦になっていくんだけど、男殺して月光の下で煙草を一服するリー、鬼婆すぎてもう笑っちゃう。まだ子供なセルビーに咎められたら「(ゴゴゴゴゴ)おもてではなぁ、人間は皆互いに毎日殺し合ってるんだよ(ゴゴゴゴ)。私は本物の善人なんだよ(…ゴゴゴゴゴ)」と鬼婆の殺し台詞ゴゴゴゴゴ。

鬼婆愛の破滅の逃避行の結末は勿論、派手な逮捕→裁判です。激熱なのは、リーがセルビーへの想いを諦めるときの顔。静かに目を閉じて「さよなら、セルビー」。もう涙で画面見てられない。それと対照的で涙乾くのがラストシーン。超強気の捨て台詞なナレーションにリー最期の姿が消えていく。結局、リーという怪物は、世間に同情なんか求めてないし、自らが自分の正義になるしかなかった。映画は「鬼婆として退場してやるわ、それが皆観たいんでしょう?」と描くことで、リーの尊厳を大事にしているのだと思う。のみならず、例え相手が振り向くことは無くても、セルビーへの愛を墓場まで持っていくよっていう意思表示がかっこいい(というように見える)。こういうラスト、男性が主人公の映画では観たこと無いね。

ブッシュ政権下でのイラク戦争のあの頃に、アメリカ的な善や正義に真っ向からぶつかって散る売春婦、という本作が製作されていたというのは面白い。監督さんや、プロデューサーも務めたシャーリーズ・セロンさんは、リーのヤケクソ人生の中に、もう一つの正義の可能性を観たんじゃないかしら。その後の彼女たちの仕事(「ワンダーウーマン」監督、「マッドマックス」フュリオサ様役等)を考えるとそんな気がしてくる。

 

執筆者・竹美

ほぼカムアウト状態の会社員。九州のパヨクな家庭に育ち、パヨク思想に染まっていることに無自覚なまま二十歳を迎え、周囲の同級生が順当に就職活動を開始した頃、全然やる気になれず焦って大学院へ逃亡。それが、「企業=金儲け=巨悪」だと信仰していたためだと自覚したのはその10年後。「思想転向」のリハビリ過程で、「真っ先に悪を告発する紅衛兵」の素養を小学生位のときに発揮して同級生にウザがられていた記憶もフラッシュバック。

このコーナーでは、映画を通じて「私やあなたというパヨク」の滑稽で哀しく、正しくて誤っている物語を発見していきたい。