パヨクのための映画批評 39

下水道版ロード・オブ・ザ・リング
〜「イット ”それ”が見えたら、終わり」(”IT”、2017年、アメリカ)

スティーブン・キング大先生が描いた「少年期の悪夢」、「イット」が遂にリメイクされるというニュースが何度も流れては消え、あたしの精神も高揚と低迷を繰り返したが、ついに公開。こんな少年期いやよ!!! 私は超能力少女(Netflixドラマ「ストレンジャーシングス」の少女イレブン役の子!!!あの子若いのに大女優演技でウケるwww)になりたかったのに!!!!!!! でもねええええこの時を待っていたわああああ…ピエロと黄色いレインコートと赤い風船のポスターを見て、影響されやすく主体性の薄い私は、映画館に赤い風船を持っていきました。近所の駄菓子屋で買ったため、何故かドラえもんの絵がついた赤い風船。ドラえもんがあの顔で襲ってくるとか思ったら超怖い。
27年に一度起き上がって来ては子供を攫っていく謎の存在「イット」(「It」=「鬼」と訳すのが意味的に近いらしい)。その秘密を知った外れモノ小学生7人が、イット退治に立ち向かうお話。

本作が「エクソシスト」を抜いてホラー映画史上最大のヒットを記録しているという位、スティーブン・キングの「イット」、アメリカ人は大好きなんだなあと驚く。ピエロ恐怖症というのが欧米には存在するらしい。
本作を製作したのは、ロイ・リーとダン・リン。アメリカに「リング」「呪怨」初めアジアンホラーを多数導入してリメイクした、2000年代のハリウッドホラーの立役者。どちらもアジア系です。更に、監督さんはアルゼンチン人。それも、メキシコ人のオタクの聖人ギジェルモ・デル・トロ様がYoutubeで見つけ出して来て「長編を作ってごらんなさい」とお金出したような人材。時代を感じるわ。本作、プロダクションの時点で「外の世界から新しいものを吸収し、自らをリメイクし変わって行くようでいて全然変わらないアメリカ」というありようを体現しているのね。しかも、最近流行の「格差ぁ」「差別ぅ」「けしからぬぅ」が一切無いので、純粋にホラー映画として楽しめます。映画パンフにも、「東海岸と西海岸=進んでて豊かなアメリカ」と「それ以外=貧乏で遅れてる」が心理的な対立構図として意識されるアメリカにおいて、イットの物語は「貧乏で遅れている」側のアメリカを描いているという指摘がありました。とは言え作り手は「進んでる東西海岸」の人々なのであるから、映画における「作る人」対「見る人」の対比が強烈だわ。
本作、子供たちが置かれている現実が厳しい。監督さんの故国アルゼンチンのスリラー・ホラー映画はやたらとゲスいという印象があるの。屈強なスキンヘッド髭男(好き)が脈絡なくジャージ姿の女教師を真っ二つにしたかと思うと親子の絆がズタズタにされる映画(「白い棺桶」)とか、身代金殺人を生業とする一家の日々を描く実話映画(「エル・クラン」)とか、パンデミック映画な「フェーズ7」とか精神的に苦しい。本作もそんなアルゼンチン・ゲス・パワーを得たのか、少女ベバリーの境遇は原作以上につらいものになっている。洗面所のシーンとかやり過ぎててちょっと笑っちゃうくらい。その一方で邪悪少年のヘンリーに孤独を滲ませるシーンを入れるというのも今までになくイット。デブ好きの皆は、ベンの可愛さに溺れなさい…本作の主人公はベン the 陥没乳首だと言ってはばからない人もいるくらい。原作でも、ベンには思い入れ感じる。太ってて、孤独で、でも頭が良くて情熱もあるというベン少年は、大人になると、痩せてハンサム色男化してしまうのだが、「大人になってもデブのままでいて!」という熱い声援も聞こえるゲイ・デブリューションな日本。

本作、「下水道版ロード・オブ・ザ・リング」と言ってもいいくらい、下水道のシーンが本当に多くて…実はわたくし、下水道の中を人がちゃんとした装備無しでじゃぶじゃぶ歩いているという描写がものすごく苦手だと気が付いた。あのぬめっとした感じと泥と臭いで私だったらイットに直ぐ命を任せてふわふわ浮かぶと思う。ぬめっている所を裸足で歩く、というのが私はもう本当に吐くんじゃねえかくらい嫌い。海藻だらけの鎌倉の海岸(湘南湘南言ってるけどさぁ、ありゃあわかめスープよ。水で戻した乾燥わかめの中で泳ぎたいのかどうか)で泳ぐとか、水草が絡みついてくる池で泳ぐとか、私本当に無理。特に湖で泳いで湖底に足つける全ての映画のシーンとか悶絶しそう。ホラー映画より正直怖い。でもね、映画のイットはほとんどの場合、ピエロの恰好で出て来てくれる…優しいのね…原作ではそういう「下水道への生理的嫌悪」を、スタンリーが感じ取っていて、それ故に彼は恐ろしい運命を辿る。

ちなみに私、原作邦訳のスタンリーの描写に誤訳を発見したの(…竹美が読んだら、終わり…)。後年のスタンリーの身体が「筋肉隆々」と訳されていたところ、私は軽い違和感感じたわ(でも同時にその部分読んだ時、私ムラムラ。しかも高校の休み時間に。美しい思い出…)。だって神経質で頭脳派のスタンリーが体鍛えるはず無いと思ったもん。後年英語版を読んだらそこ、「筋張った」と訳すべきだったことが判明…ゴゴゴゴゴ…ゲイの世界で言えばマッチョとキショガリを間違えて訳すという不具合。改善報告書まだぁ? 私本職でそれやったら半年位突きまわされるわ。3年前の本職での不具合のときは、私の生霊のせいで(多分)、クライアント側のご担当の方が心を病まれてしまって沙汰やみになったんだけどねゴゴゴゴ(竹美の本性はやっぱり超能力少女かもしれない)。
子供たちは、ラストに、大人じゃないから妙に真面目で、意味も分かんないで結構すごい誓いを立ててしまう。それが後年どう響いてくるのかなんて考えられない。健気。下水道と言えばねえ、何とこの私も、地元の小学校の近くの下水道みたいなところで、同年代の男子たちと集まって遊んでいた、という時代がわずかながらあったのよ。そういう風に「男子」に仲間に入れてもらうというのが嬉しかったな。その後、顕著にパヨク化+口数が多くてウザい私から男子は離れてゆき、私も次第に内面が超能力少女化して…というのは今日まで思い出すこともなかった。ものを書くって面白い、忘れていたことがイエスタデーワンスモアしちゃうの。でもそれは思い出したくないことも一緒に連れてくる。子供時代を「よい思い出」だけで語ることはできないという現実を本作は描いている…にも関わらず観終わった後にそういう感想が全然出てこないの。忘れた昔を思い出すというのは、実際、下水道の冒険みたいなもんだわ。子供時代の自分が何をしたのか。そこにどんなイットが隠れているか、分かったもんじゃない。80年代を輝きの子供時代として参照するホラー映画・ドラマが最近人気ですが、本当はそんなもんじゃなかったかもよ。

執筆者・竹美

ほぼカムアウト状態の会社員。九州のパヨクな家庭に育ち、パヨク思想に染まっていることに無自覚なまま二十歳を迎え、周囲の同級生が順当に就職活動を開始した頃、全然やる気になれず焦って大学院へ逃亡。それが、「企業=金儲け=巨悪」だと信仰していたためだと自覚したのはその10年後。「思想転向」のリハビリ過程で、「真っ先に悪を告発する紅衛兵」の素養を小学生位のときに発揮して同級生にウザがられていた記憶もフラッシュバック。

このコーナーでは、映画を通じて「私やあなたというパヨク」の滑稽で哀しく、正しくて誤っている物語を発見していきたい。