「あっきー★らっきー水曜日」その13

社員が痴漢になったら?

(随分と経ちましたが)あけましておめでとうございます。2017年を漢字一字で表すと、「抜」でした。

「もう、ヌキにヌキまくったぜ!」

 間違いました。どちらかというと「抜いた」より、「抜けた」という感じ。暗いトンネルを抜けて、外に飛び出した年でした。ですので、新年は「差」の年にしようと思っています。そう、抜いたり差したり……ではなく(ごめんなさい)、「差し馬」という意味合いの「差」。人生も後半のコーナーを回り、これから追い上げつつ、差していこうと思います。本年もよろしくお願いいたします。

  出版社にいた頃、編集の仕事以外にも、編集総務部という企業のコンプライアンスを扱う部署にいたことがあります。いわゆる法務部のようなところでして、著作権法や景表法などのほかに、メディアゆえに発生する差別問題などの表現のトラブル対応もおこなっていました。LGBT研修の講師として、ママの伏見憲明さんをお招きしたこともありましたね! また、新聞やテレビなど、出版以外のメディアのスキャンダルも毎日チェックし、「あーでもないこーでもない」と内容を議論していました。それは、自身の会社のスタンダードをキープするためでして、やたら頭をモヤモヤさせる業務でした。

 企業が社員の不祥事に出くわすことは避けられないことであり、この対応も仕事のひとつです。その際、昨今の状況下ではいろいろと「正しい」対応が求められることになります。冗談ではなく、「謝罪会見の開き方」というセミナーが企業向けに開かれており、僕も受けたことがありました。「ネクタイの色」や、「お辞儀のタイミングや長さ」などを大真面目に取り上げる内容でした。さらには、「時間は夕刊の締切りに間に合う設定にする」「貧乏ゆすりなど足には感情が出やすいので、テーブルにはクロスをかけて足元を隠す」など、実践的な話もありました。おそらくその通りにしたとて、「マニュアルに従い過ぎ」とネットのヤジが飛んできそうですなのですが……。

 いろいろある社員の不祥事の中でも、最も慎重な対応が迫られるもの。それは、「エロとクスリ」といわれます。僕が携わった具体的な案件はありませんでしたが、やはりこれらに関しては、第一に社会の目が厳しい。また、性にまつわる事件だと好奇の目も集中し、それはもう否応なくセンセーショナルに扱われてしまいます。収拾がとても難しいのです。

 もし例えば、「社員が痴漢でつかまった」という事案が発生した場合、企業はどう対応するべきなのか? まずは、「事実関係を確認し厳正に対処する」というような発表をする。外部からの問い合わせの窓口や回答の文言を統一させる。当人と弁護士と交えて接見する。法務、広報、人事など諸々が連携して動き、警察で下される判断をみながら、社内での処分を検討する。こんな定型の流れがあるんだと思われます。

 その時、不祥事を起こしたとはいえ、「社員を守りたい」という思いがあるのも事実です。能力や人望のある社員なら、心情としてはやはり助けてあげたい。結果、会社のイメージや利益をも守ることになるのなら、なおのことです。会社に対する詐欺行為などの悪意を持って不利益を与えるような事件を起こしたならば、その社員には相応に処分されるべきです。しかし、それが痴漢のような性犯罪であるならば、もちろんそれはゲスな行為なのですが、ひとつ立ち止まり、その社員が抱えているものに寄り添うことも必要という気がします。

 斉藤章佳さんの『男が痴漢になる理由』(イーストプレス)には、こんな記述がありました。

「内面の問題が”性”のシーンで表出しやすい。これは、男性の特徴です」

 なるほど、エロの場面だと抑圧されていた回路に電気が流れるということは、わかります。では痴漢をした社員が抱えていた内面の問題とは、何だろう? ストレスなのか、孤独なのか、もっと根が深い本能的な何かか? 痴漢はとても犯罪率が高く、それは「依存症」なんだそうです。しかし被害者が存在し、大きな傷を与える痴漢は、その他の依存症のように「病気扱い」してはいけない、とも言います。

 17日(水)は、中村うさぎさんと斉藤章佳さんのトークショーです。依存症は、諸悪を招くがんのように思われがちですが、切除するように完治できるものではないはずです。がんの細胞の元だって、人間は元来的に持っているといいます。貴重な依存症トーク、足をお運びください!

 

あっきー(水曜担当)

【プロフィール】 1975年埼玉生れ。
出版社に16年間勤務し漫画や小説などの編集に携わったのち、
なし崩し的にフリーに。
NPO法人「企画のたまご屋さん」では、出版プロデューサーを務める。

twitter / @akkyluckybar