Pocket

パヨクのための映画批評 46

成功するって結局どうなることなの~
「WE ARE YOUR FRIENDS」(”We are Your Friends”、2015年、アメリカ・フランス・イギリス)~

 

人生において成功するってどういうことなのかしらね。私ったらパヨクな上に30近くなるまでまともに勤労してませんでしたのでね、「成功」というものからほど遠い所で生きてました。言うなれば「「勤労」っつったら北朝鮮の理論雑誌の『勤労者』のことかい?」と心の中でボケても何も聞こえない…びゅおおおお…でね、何にも考えないでのほほんと20代半ばまでを生きてしまうとね、人より遅れて世間に出たときに惨めな気持ちになるのよ…まぁ、自業自得ですね。「うまくやってる」ように見える人に嫉妬に近い気持ちを覚えて(こじらせ)、「自分の家がパヨクだから自分がこうなったんだ」と親を恨んで(勝手にふるえてろ)…色々とちっともこじれは治ってなかった…私ったら今なお行先不明感すごいんだけどね…今回の映画は、もう色々あり過ぎな現代のロサンゼルスを舞台に、「成功する」って具体的にどうなることなのかと問うている映画です。主人公は、最先端の音楽、エレクトロニック・ダンス・ミュージックのDJという、キラキラしてそうな仕事に人生を捧げようとしている若い男子よ。もう一つの「ララ・ランド」とも言える内容で、夢を持つ若者達が這い上がろうとする様子を、最先端の電子ダンス音楽とかっこいい映像で描き出します。

さて、主人公の若者君4名は、大学進学はせず、夢を追っております。中には、「ここから這い上がってやるんだ」みたいな気持ちはあるけど、まだ自分の夢を明確にできない程度には子供な子もいる。んで、とりあえず仕事だっつって地元で幅きかせてるおっさんの経営する不動産屋に就職するよ。で、その仕事の様子はね、日本だと、派遣切りとか、低賃金でサービス残業とか、パワハラとか、「ちょっと今から仕事やめてくる」みたいなお話になりそうなんだけど違うよ。不思議とまともに見える。でもねえ、悪どい不動産屋だわよ~だって経営者ペイジ役はジョン・バーンサルさんだもん。目視で分かるレベルの明らかなワル。大概若い女連れてます。「ザ・コンサルタント」でも、分かりやすい「いいやつ」ベン・アフレックの宿敵役でワル(でも最後は唐突なBL展開で濡れるわよ~)。そんな人が経営するんだからさ、ブラック企業に決まってんの。でもね、彼は彼なりのやり方でそこまで這い上がって来たことも何となく分かる。また、アメリカの会社、ひでぇことをするにしてもとてもノリが明るく丁寧なので、ある意味日本より狂っているかもしれない。そこで若者君達はうっすら予感している:成功するには自分も「悪」にならないといけないのでは?と。その時点で、若者たちは第1回の「ドント・ブリーズ」で出てきたデトロイトのアンポンタン達と同じく、やっぱり短絡的に考えてしまう。子供だからしょうがないよね(タイトル忘れちゃったけど、空き巣やって金儲けたら足を洗って幸せに暮らすんだっつって若者君達が空き巣入ったら監禁魔の家だった、みたいなアメリカンザマミロホラー映画は同じ時期に他にも観た)。彼らの場合は空き巣ではなく、手っ取り早いビジネスとしてドラッグの密売に走るわよ。やっぱりな。また、大人や親や世間を当てにしてないというのも共通している。ちなみに、唯一クリーンめで、DJ目指してる主人公コール青年は、家を離れて友達の家に居候なのに、親のことがほとんど出てこないし、コールが居候してる友達の親も、ほとんどのシーンでピントが合っていない。彼らの世界にとって親というのはそれ位疎遠なのね。分かりあうこともないし意外と憎しみも無い。

さて、欧米のドラマや映画には、高校生以上のパーティと言えば必ずドラッグ使用が描かれるけど、本作、パーティとドラッグの切れない関係がラスト近くで重くのしかかって来る。本作はドラッグの問題を若者君達が自省して生き方を考える転機として置いているのが最近のアメリカ映画としては珍しい。「レクイエム・フォー・ドリーム」以降のハリウッドは、ドラッグの問題を諦め、運び屋の話を「クール」だと描いたり、麻薬取引の問題を「悪の魅力」として描いたり、オーバードーズをお笑いとして描く始末。テレビドラマはその問題に多少踏み込んでいるようですが、あれだけ有名人がバタバタとクスリで死んでいるのにオスカー候補作品にその手の映画がほとんど入って来ない間は、反省も期待できないでしょうね。#MeTooとか言ってる場合なんだろうか。

本作を「成功者が何をもたらしたか」という文脈で見ると、「ソーシャルネットワーク」の段階の先…大学ドロップアウトからの、アイデア一発勝負でジーンズ穿いた億万長者社長になり、世間を見返す成功物語…の先にある世界。インターネットいじめの問題、最近の#MeToo運動の我も我も感等、自分の本当の気持ちやら意見がよくわからなくなっちゃった。YouTuberの無礼さと勘違いぶりも。直ぐ影響されてしまう私達。そういう中で、本作が好きなのは、現代社会の倫理性を問うのではなく、「あなたは」どう生きるか?と問うところ。本作のラスト、お約束かもしれないけど、遂に成功のスタート地点に立ったコールの姿に何か感動しちゃった。今の自分を構成する具体的な体験や感情…育った街の風景や、友達や恋人、喪失、出会い、怒り、愚かさ、ひらめき、喜び、後悔…を全部受け止めて自分の物語を語り始めた時初めて、あなたは成功者になるんだと言っていたみたい。演じてるザックエフロンさんも、演技しながら何かその辺感じ取ったのかしら。喜びも強いけど少し苦い顔してたのよね。成功者になるって、うれしいことばかりじゃないんだと知っちゃってるから。

多分、映画「ザ・インビテーション」に出てきた意識高い系なお屋敷は、成功した先輩DJのうちの近所なのではないかしら。金持ちの世界のすぐ隣には、パーティイケイケ族がたむろしてる。そういうものを日々、通りの反対側のイケてない街から見せつけられている主人公君達は、みんな、自分達が勝ち組ではないと思い知らされる。それ故に、夢を具体化する前から負け犬(loser)になりたくないという切迫感持っちゃうんだな。大して考えてもないうちから。「ドント・ブリーズ」の若者たちは訳も分からず金稼いでカリフォルニアに脱走したがっていたのに、ロサンゼルスでもあんたたち大差無いわよって話なの。

「何をしたら成功できるか」ってのはいつも闇の中だから皆を誘ってやまないけど、見たところ、世のハウツー本はほとんど役に立ってないみたい。本ってのは思考の足跡に過ぎないってショーペンハウアーが書いてたような。でも、成功者が辿る心的な体験は、意外と皆同じなのではないかしら。そこに何か、生きていく上で貴重なヒントがあるような気がします。

執筆者・竹美

ほぼカムアウト状態の会社員。九州のパヨクな家庭に育ち、パヨク思想に染まっていることに無自覚なまま二十歳を迎え、周囲の同級生が順当に就職活動を開始した頃、全然やる気になれず焦って大学院へ逃亡。それが、「企業=金儲け=巨悪」だと信仰していたためだと自覚したのはその10年後。「思想転向」のリハビリ過程で、「真っ先に悪を告発する紅衛兵」の素養を小学生位のときに発揮して同級生にウザがられていた記憶もフラッシュバック。

このコーナーでは、映画を通じて「私やあなたというパヨク」の滑稽で哀しく、正しくて誤っている物語を発見していきたい。