パヨクのための映画批評 49

あなただけがいない場所で~「海街diary」(2015年、日本)~

年を取るにつれ、色々な事を体験するものだな~と思います。そうなると、少し前なら「絶対観なかった」タイプの映画を観るようになり、尚且つその中で驚きの発見をしたりします。いいタイミングではっとさせられる映画に出会えたら興奮してしまって、無駄にDVDを借りて見て、返却の延滞をしてしまうの。だらしない私は、かなりTS●TA●A様に投資してると思うんですけど。「息子の部屋」「ラバー」なんて二度借りて二度寝ちゃって全部観なかったからね。

さて本作。綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆に腹違いの妹が、「はい、私、結構かわいいしうまいです!」な広瀬すずさん、そのご母堂が大竹しのぶという、少し考えれば「絶対実在しないよね?」と分かる女一族ファンタジー映画。何かそんな女子女子した映画なんてねぇ…しかも何ぃ? 場所は鎌倉ぁ? わかめスープみたいな海岸しかないところでしょう? 私とは一生関係ないねと思ってたのに、たまたま観たら、すっかりのめり込んでしまった映画です。

出奔した父が見知らぬ土地で亡くなり、残された三姉妹が父の葬儀に行く。そこで出会った父のこれまた別の女性の娘に、一緒に暮らさない?と持ちかける。鎌倉の古い家に、これまた出奔してる母はおらず、四姉妹の不思議な生活が始まる。

ストーリーはあるようでないようで。私、長澤まさみさんは、歌が異様に上手い(英語の歌を英語の歌らしく聴かせられる人は本当に珍しい。耳がいいんだと思う)ので興味があったのですが、本作では、よくモノマネされる、ふがっへっへっへっみたいな酔っ払いOL午前一時にご機嫌です、みたいな役がよかったわ〜小泉今日子に似てる気がする。我が道を行く酒好き。

綾瀬はるかさん、こんな役やる人なんだね。知らなかった。紅白の司会やった辺りから好きになってましたが、本作もよかった。えねえちけえのファンタジードラマで顔に泥つけて男子のような話し方するのもキマってるし、何か大らかで真面目な人なんだなと思う。でも不倫看護師24時の役だよ!不倫が悪いとは言わないけど。長女として、妹たち、特に酒好きのまさみを心配しているが…不倫のこと言われてぐうの音も出ないんだろうな、っていう不完全さがよろしかった。

夏帆さん、あんまり私の中で印象無いんだけど…モード学園に通ってそうな感じがするけど、通ってはいないのね。ドラマの中でもそこまで出てこなかった気が。

そして出ました大物の器を持つ広瀬すずさん。とにかくこの人が出てくると見ちゃうのよね。上手いし気品があるし、まあちょっと一人だけ大女優演技の感はあるけど、好き。

本作、全体的に好きなんだけど一箇所だけ言わせてもらう!

あの季節にぃ、水仙はぁ、咲かなぁぁぁいいいいんだよおおぉおぉぉぉおぉ

あたしすずちゃんが水仙の花を見つけるシーンで、あれ? もう一年過ぎたんだね? と勘違いしたわよ!? 北朝鮮のことやる前は農学部だったあたしをなめるんじゃない…ゴゴゴゴゴ…我ながら中途半端というか不思議な経歴…気が多いんだな。高校の担任に面談で「君は欲張りだ」と言われたの、今でも覚えてるわ。あなたが正しかった。選べないのよね。そして今インドに夢中だし。もうインドのどこに行って何をするのかまで決めちゃってるし。

本作の何が一番好きだったかというと、彼女らの微笑ましい様子もさることながら、本作に流れる設定。これ、死人が軸になって生まれる関係のお話なんですよね。話題のNHKドラマ「弟の夫」も同じね。その人がそこにいないから、みんなが集まって、新しい関係を作ったり、それまでの関係を強化したりメンテナンスしたりする。不在の人のことを好きでも嫌いでも、憎くても、やっぱり集まれば話してしまう。話し始めると、あれもあった、これもあった、と笑い話も出てくる。一緒に涙する話も少し、腹の立つ記憶も。でも、不思議とね、そうやって、いない人の話をすると、目の前で、自分と同じように不在の理由や現実を受け止めようとしてる人に優しくしたくなるという傾向があるみたいね、人類には。これ文化は関係ないみたい。目を見たら何か分かるの。きっと、いない人の話ができる、という時点で何かの縁であり、幸いなんだよね。愚かな人であれ、立派な人であれ、本当にあなたが関わりたくないなら、その場には集まらないはず。話さないはず。せいせいして、思い出しもしないはず。「バカヤロー」と綾瀬はるかのように山の上から叫んでしまうのは、断ち切れない思いが残ってるから。

そこにいない人が結びつけたり強めたりする関係、というの、私は既に2度体験しました。互いの目の中に動揺や悲しみ、混乱を見てしまうと、不思議と「つらいのは私一人ではない」と安心するみたい。そこにいるはずの人がいなくて、ぽっかり空いた穴を無意識に埋めたいから、目の前の人に対して優しくしたくなるのかな。それは穴が埋まってしまえば消えていく感情かも知れないけど…結局埋まらないこともある。例え悪口しか出てこなくても、後に集まった人達が互いをいたわれるなら、その人に出会えて、その人が生きててくれたことに意味がある。そして、互いをいたわることを学べたら、私たちもまた、そこに生きた意味が他の誰かに伝わっていくのではないかしら。

自分に素直になってそれまでの自分を考え直す人の描写が最近とても刺さる。もちろんそんな人、そんなにいないのかもしれないし、自分の気持ちや考えに素直になれない時間の方が長いと思う。でも、仕事の帰り道でふとこの映画のことを思い出して、「そういう人がいて欲しいな」と考え、自分もそうなれたら…とぼんやり考えたりする。

 

執筆者・竹美

ほぼカムアウト状態の会社員。九州のパヨクな家庭に育ち、パヨク思想に染まっていることに無自覚なまま二十歳を迎え、周囲の同級生が順当に就職活動を開始した頃、全然やる気になれず焦って大学院へ逃亡。それが、「企業=金儲け=巨悪」だと信仰していたためだと自覚したのはその10年後。「思想転向」のリハビリ過程で、「真っ先に悪を告発する紅衛兵」の素養を小学生位のときに発揮して同級生にウザがられていた記憶もフラッシュバック。

このコーナーでは、映画を通じて「私やあなたというパヨク」の滑稽で哀しく、正しくて誤っている物語を発見していきたい。