「変態年増のMixBox」その1

はじめまして、変態年増ライターの川西由樹子と申します。コーナータイトルの[MixBox]は、つねにLGBTムーブメント&カルチャーを牽引してきた偉大なるゲイ様のハッテン文化に敬意を表して、「ミックスルーム」からMixを採らせていただきました(Boxのほうは、ご想像にお任せします)。駆け出しのライターだった90年代からあちこちに書き散らかしてきた変態文などを中心に、あれやこれやの雑文をお送りしていこうかと思っています。どうぞよろしくお願いします!
 

さて、凹と凸の結合=セックス、と考える単純な想像力の持ち主に女同士の行為を描写させると、とんでもない映像が出てきてしまい、わたしども当事者を大笑いさせてくださいます。「男役女役、きっちりわかれてるんでしょ」「やっぱバイブは欠かせないよね」、いわせておけばしまいには「片方が下半身に男のアレみたいな道具つけてするんでしょ?」

無邪気なノンケの方々の思い違いなど、放置プレイを決め込んだところで実害はありますまい。とはいえもし、この文章を読まれているあなたが初心者中の初心者の、同性と未経験の女性で「あーん、はやく女のヒトとしたぁい! もお、いつまでも童貞女のままでいるのイヤよぉ!」という状態なら、例に挙げたような極端な想像図は今後の愉しいラブ&セックスライフを夢見る上で、ちょっと困った障害になる可能性もあります。

そこで、まことに僭越ながら、羞恥心がないことで有名なわたしという変態女が「女性同士の愛の交わし方」の一例を、この場をお借りして描写させていただくことになりました。

▽▽▽

――互いの沈黙を意識しだしたら、こっそり唇の乾き具合を確かめる。キスは大事な小道具、相手の全身に触れるこの部分には、なるべく優しい感触を保つようにしておきたい。

彼女から唇を重ねてきた。果物のような感触のそれでわたしの同じ部分をついばみ、小刻みに動く舌を少しずつ忍び寄らせてくる。口蓋にちらちらとうごめく舌先を感じて思わず身体をのけぞらすと、遠慮がちな動きだった舌が、急に強気になりはじめる。片手は胸のボタンをはずし、小指の先で乳首を軽く弾く。

〈されるままになってていいのかな、あたしもお互い裸になるの、手伝ったほうが……〉

男とつきあってた頃は決して浮かばなかった発想が頭をかすめる。薄く眼をあけてみると、彼女はもう下着だけ、わたしも全裸にされかけてるところ。手助けは必要なさそう。

〈……!〉

首筋を彷徨ってた彼女の舌が、いきなり胸まで降りてきて、わたしの乳首に歯を立てた。抗議するように睨むと、悪戯っ子みたいに唇の端だけで微笑む。いつもはわたしよりおとなしくてちょっと引っ込み思案そうな彼女のこんな一面を見せつけられると、どんなふうに扱われてもいい、とさえ思えてくる。

片方の乳房は手のひらの中央の窪みで、一番敏感な先端を転がされている。女の胸を乱暴に鷲摑みにしたりしないのが、彼女の愛撫。力を入れず、まるで自分自身の指や唇を愉しませるかのように時間をかけて、わたしの身体を溶けさせていく。

急に彼女が顔を起こす。我慢できないように身体をずらし、剥き出しにされたわたしの両足の間に割り込んできた。

川西由樹子 著『Q式サバイバー』

〈どうしちゃったの? いつもは、時間をかけて焦らして、あたしのこと苛めるくせに〉

だけど、こんな性急な彼女も大好き。わたしの身体に心底夢中になってる、って感じで。

両足がちょっと乱暴に開かれる。彼女がその部分に顔を近づけてくる。

〈観察されてる。もう、相当濡れてるのに……〉

最もプライベートな部分に女の人の視線を感じる。わたしを一番どうしようもなくさせるのが、このシチュエーションだ。

〈……あ……っ〉

思わず声が洩れる。彼女の舌が、細かく震えながらクリトリスをかすめたのだ。指で敏感な部分を左右に押し開き、舌先を割り込ませてくる。舌でまさぐってから、わざと大きな音を立ててわたしの液体を飲みくだす。

〈美味しい。最高よ、あんたのって〉

ああ、お願い、そんなこといわないで。目を向けなくても、彼女の表情がはっきりわかる。いつものおとなしそうな彼女からは想像もつかない、加虐的な苛めっ子の瞳。わたしだけが知ってる、愛する人の特別な一面。

指が、二本まとめて入ってくる。身体が弓なりにそり返る。二本の指は慣れた手つきでわたしの内側の敏感な部分を探りあて、ピアノを弾くように攻めはじめる。俗にGスポットなんて呼ばれるこの場所は、わたしの場合、どうしても男のペニスじゃうまく刺激できない。全てを委ねられる女性の指先だけが、その部分を楽園の入口にしてくれる。

クリトリスを苛めていた舌先の回転が速くなってきた。指の動きも容赦ない。身体が、一点に向かって収斂していく。

〈嫌、まだいかさないで。もう少しあなたに、こうして意地悪なことされていたい……〉

でも、もう限界。突然、下半身に集まっていた熱が爆発する。思い切り声をあげると、痙攣が走り抜ける。彼女の指を痛いほど締め上げながら、その愛撫を完結させる……。

終わったあとの彼女は、ついさっきまでとは打って変わって優しい。髪をかき上げながら、おでこにキスしてくれる。

その指をつかんで引き、身体を反転させて彼女の上に乗る。

たじろいだようにわたしを見上げる彼女の瞳の中に、わたしを抱いていたときの意地悪な光は微塵もない。この立場の逆転とお互いの豹変こそが、女同士のこたえられないところだ。

〈さんざん苛めてくれたお礼、させてもらうわ。今度はあたしがあなたの楽園の扉、こじあけてあげる〉

すっかり従順になった彼女の身体を、わたしの唇が少しずつ開かせていく――

▽▽▽

以上は、あくまでほんの一例にすぎません。女同士のセックスの気持ちいい点は、奔放な立場の逆転だけでなく「これこそがスタンダード!」みたいな、うっとうしいマニュアルが存在しないところにもあるのではないでしょうか。誰かが勝手に決めた常識から無縁な場所で自分たちなりの愛し合い方を構築できるなんて、こんな幸福な状況、そうあるものではないのでは。ああ、なんて運のよいわたしども。

それでは、該当者の皆様。今宵、もしくは未来のその瞬間に備えて、爪にはヤスリ、唇にはリップクリームと極上のスマイルを、どうかお忘れなく。

(つづく)

 

川西由樹子 / 90年代から女性同士の性について赤裸々に表現しているビアン・ライターの草分け。ビアン雑誌「カーミラ」でも主要ライターとして活躍。著書に『Q式サバイバー』など。