「あっきー★らっきー水曜日」15

この場所から生まれる物語

 3月10日の朝日新聞夕刊に、アデイの記事が掲載されました。スタッフのこうきさんの絵本をクラウドファンディングで作るプロジェクトが紹介され、「アデイonline」にも触れられています。この紙面で目に入ってきた言葉は、これでした。

「この場所に あふれる感情」

 次いで同紙の3月22日には、このプロジェクトを応援する中村うさぎさんのインタビューが掲載されています。商業出版にはない、出資者が参加する仕組みについてはこれ。

「強烈な個性 見出す愉しみ」

 どちらも、印象に残る見出しです。新聞に縁がない人も多いですが、紙面をめくって目に入る文字、大きさ、位置には、創意工夫があります。この新聞記事はお店にもありますので、液晶の画面ではなく、ぜひ現物を見に来てください。ところで、この記事を眺めていて、ある思いがよぎります。

「この店、ちょっとばかしディープだよなあ」

 こうきさんに関連して伝えられているのは、幼い頃の虐待や、路上生活のこと。トリミングされた情報を目にした方が初めて訪れるには、やや難易度が高いのではないだろうか。彼の絵の鋭く鮮やかな色彩は強い精神を感じさせ、元気をもらったりもします。むしろ、デヴィッド・ボウイのイラストがビンビンしていて、こじゃれたサブカルのバーにも見えるんですけど(笑)

「アデイを求めているお客さんて、どんな人?」

 ふと疑問が沸いた僕は、常連の方に聞いてみました。二丁目には、数多のバーがあります。かわいこちゃんがいたり、強めのママがいたり、超超強ええママ(!)がいたり。その中で、なぜこのバーを選ぶのか、と。

「うーん、アデイ以外ないんですよね。常連さんと他の店で会うことは、あまりないですし」

 他に似ている店がないということでしょうか。では、ここじゃなきゃいけない要素とは何だろう。紙面に掲載されている写真を見れば分かる通り、笑顔が絶えない普通の酒場です。曜日ごとにカラーも客層も変わるのですが、スタッフの僕も何が水曜の売りになっているのか未だ分かりません。ふと思うのは、こうきさんだけでなく、誰だって心のどこかに古傷があるということ。この「ディープだよなあ」という小さな場所こそ、その傷を安心させるナニカがあるのかもしれません。

 そして傷にまつわる感情が沸点に達し、絵という形に現れたのがこうきさん。この何かが生まれる「物語」に触れられることは、刺激的です。願わくば、これからもこの場所が物語を創生するプラットホームであってほしい。アデイのあちこちで、エネルギーが飽和しているような気がします。自分はやはり、言葉を通じて沸き立つナニカが顕在化するのを見てみたいです。例えば、「二丁目文学」を標榜してはどうでしょうか? こう掲げちゃうと、なんかダサいですね……。

 アデイは4月で5周年、僕も水曜担当になり季節が一周するようです。一緒に何か企てたいという方、こっそり伝えに来てください!

 

あっきー(水曜担当)

【プロフィール】 1975年埼玉生れ。
出版社に16年間勤務し漫画や小説などの編集に携わったのち、
なし崩し的にフリーに。
NPO法人「企画のたまご屋さん」では、出版プロデューサーを務める。

twitter / @akkyluckybar