「あっきー★らっきー水曜日」その16

やってみる? 二丁目文学

「土地と文学」について、考えています。といっても、いかめしく図書館にこもっているわけでも、みやびやかに文豪の由来の地を旅しているわけでもありません。ただ、

「新宿二丁目からは、どんな物語が生まれたんだろう?」

 と。前回の日記で、アデイ周辺から作品が生まれる景色を見てみたいと書きました。それからしばらく、この新宿二丁目という場所から、どんな創作が生まれて世の中に及んでいったのか。そして、これから発生する可能性があるものは何か、知りたいと思っているんです。

 元来は文芸編集者(だよ!)の僕は、ふらっと作家や言葉がかかわるイベントに出かけています。ここのところは、やはり二丁目が持つ文学性(大袈裟だけど)という観点も抱きつつ、各所に足を運んだような気がします。気になったものを3つ、ご紹介します。

 現在、杉並区の中央図書館の展示コーナーで開かれているのが、「ねじめ正一展」です。ねじめ正一さんは、阿佐ヶ谷に民芸店を営み、『高円寺純情商店街』で直木賞を受賞した作家として知られます。小説から絵本まで幅広い著書がありますが、その原点あるのは詩。展示のタイトルは、「常に詩人である」でした。 

 パネルになっていた『かあさんになったあーちゃん』の詩は、ねじめさん本人の朗読で聞いたことがあります。それはもう、自然と呼吸が合ううちに聞いていると、息継ぎができなくなるほどのスリリングさ! かなり前に聞いた朗読ですが、その場で味わった感覚は、文字を目の前にしたらすぐに蘇りました。色や匂いや温度が、この文字列のどこの部分に格納されているのか、わかりません。ただ、研ぎ澄まされた言葉には、あれこれを超越した力がある。静かな図書館で思いました。

 朗読会として(こっそり)参加したのが、「ヴァイナル文學」です。作家の石丸元章さんなどを中心に立ち上げられたもので、一編の小説をその場や人で共有しようという試みです。ヴァイナル(vinyl)とは、アナログレコードの意味です。あるテーマで作品を競作したり、読者も参加して朗読するなど、アナログかつ双方向で作品の世界を共有することを目指しているそうです。小説は雑司ヶ谷がテーマになっており、霊園のある地の描写は虚実がないまぜになってしまうような不思議なもの。抽象的な表現が多く、意味を拾うというより、体をひねれば言葉がこぼれてくるのを見ている感覚でした。

 石丸さんといえば、自らが外に出て、読者と共通の体験をする場を作っている方です。朗読される作品は、実際にイベントに行かなければ入手できない限定のものでした。ヴァイナル(ビニール)のパッケージに封入するという趣向で、デザインもカッコいい! 読者に「行動を起こせ!」と言わんばかりで、新たな予感がしました。

 そして、「文学フリマ」です。こちらは、大学の文芸サークルや同人サークルなど、文学に特化した即売会です。実はコミケも含めて、この手のイベントには行ったことがありませんでした。アデイには、漫画を描いて本を制作しているスタッフもいます。その熱烈なファンも店に訪れているのを目にして、「どうも隣にある市場がアツいらしい!」と気になっていました。僕は、(幸か、不幸か)商業出版にどっぷり浸かっていました。売れる本を作らなきゃいけない。これは当たり前なんですけど、それよりも前にあったものって何だっただろう? どこかに忘れてきたことを目の当たりにしたような、真っ直ぐなイベントでした。

 そんなわけで、「二丁目文学(仮)」です。この場を借りてやってみたいことは、2つあります。文学賞を創設して、作品を公募すること。そして小説集を作ること。作品のテーマは、二丁目を軸に考えたいです。誰もが書いたり読んだり、街の魅力を発見できるといいですね。もちろん皆さまのアイデアは大歓迎、ひとまず始動してみます?

 

あっきー(水曜担当)

【プロフィール】 1975年埼玉生れ。
出版社に16年間勤務し漫画や小説などの編集に携わったのち、
なし崩し的にフリーに。
NPO法人「企画のたまご屋さん」では、出版プロデューサーを務める。

twitter / @akkyluckybar