Pocket

パヨクのための映画批評 58

どっかーん80年代… 「コマンドー」(”Commando”、1985年、アメリカ)

人は幼少期に観たものを一生愛し続けるのと同時に、その時欲しくても手に入らなかったものを永遠におっかけ続けるのではないかと思う。私にとって80年代というのは、性と娯楽の情報統制時代だった。ホラー、ポルノビデオ(性的なモノ全般)、侮辱的なシモネタ、アクション映画:私は最近、80年代に全く触れさせてもらえなかった領域ばかりを好んでいるように思う。ほとんどえねえちけえしか見せてもらえず、民放のお笑い番組なんてもってのほかだったので、親(特に父)のいない時間帯に民放の番組を見てせっせと知識詰め込んでたの。大概再放送だったな。東ドイツ国民がパラボラアンテナで西ドイツの番組見てたみたいな感じよ。あはは。笑えない。でも土曜の夕方のアニメとか戦隊ものは見せてもらってた。1986年(だったかな?)辺りに、平日夜という極めてハードルの高い時間帯のドラえもんが解禁されて(ペレストロイカだな…)、水曜のアニメも解禁され、1989年には天安門事件の最中、我が家は火事になったんだけど、余波でなし崩し的に民放も見られるようになったの。そうこうしてるうちにベルリンの壁崩壊でしょう。でも、お笑い番組だけは最後の最後までダメだったね。

ある意味、「パヨク」というものと対決することになったのも、当時禁じられていたものにアクセスしたいという欲求なのかもしれん。でも、えねえちけえならOKっていう感覚もよく考えると分からない。

さて、今回の映画「コマンドー」は、ネットで「これ超おもしろいよ」と書かれているのを見て改めて思い出した80年代アクション映画です。アーノルド・シュワルツェネッガーを主役に据え、大ヒットした映画よ。吹き替えもノリノリで、ネット上で「コマンドー」は大人気コンテンツなんですって。

山奥で娘と二人暮らしの元特殊部隊員ジョン・メイトリックス。彼の元部下が次々に殺害される事件が発生、やがて彼の身にも危険が迫り、娘が誘拐されてしまう。娘を奪還するため、メイトリックスは銃器をかついでえっさほいさと敵陣に乗り込み、大暴れする。

80年代アメリカはレーガン政権下で、「強いアメリカ」を演出したと言われます。ハリウッドもそれに乗っかって、戦争を全面肯定するような映画を大量に製作しました。本作はその王道。バカさに妥協が無い。70年代までのあの慎みとか俯きはどこに行ったんだ。「追憶」のバーブラ様が怒るぞ。

とにかく80年代というのは、むっちゃくちゃ元気がいい感じがする。他方ですごい影のある時代でもあるんだけど、B級ホラー映画の黄金期だったことを考えれば、その影さえもやたら元気がいいのだ。色使いはどぎつく、洋服の形は肩にパット入ってて宇宙服みたいで奇抜、変な刈り上げ頭してた。星マークを顔に描いちゃったりして男も化粧してた(映画の中の有名なシュワの台詞「ボーイジョージ?ガ-ルジョージだろ?」娘「パパったら古いわね」シュワ「共産圏ではロックは禁止だった。正しかったのかもな」というセリフあり。ポリコレの今だったらギャグ以外で出てこないだろう)。マドンナやマイケル・ジャクソンがポップ界の覇者になり、映画の世界では威勢のいいカウボーイのアメリカが復活していた。まあ、大統領からして西部劇のスターだもんね。

ストーリーも、今考えるとどうしてこれがと思う位バカバカしい運び!過去に特殊部隊としては中米某国で特殊任務をしていたっぽいメイトリックス。

パヨク的には赤信号(=大好物)だよ!!!タカ派のレーガン政権キタァ!!!!!

「バリー・シールズ」でも考察した、80年代にアメリカ政府がラテンアメリカの政府をいいように操り、気にくわないとクーデターを起こしていた、という事実に何の躊躇いも無いのよ。ハリウッドは、他方で感動作も沢山作りながら、一方ではなーんにも考えてなかった時代。現在では「キャプテン・アメリカ」のように、破壊行為に対する罪悪感やヒーローの苦悩を描かなければ、映画においてアメリカの海外での工作や破壊行為は許容されないのかもね。

銃乱射と死人の数がものすごく多い映画なのよ。でも彼はほとんど傷を負わないのにね。ほぼ同じ時代にオリバー・ストーンや、「危険な情事」のエイドリアン・ラインが「ジェイコブス・ラダー」でベトナム戦争の悪夢を描いたのに対し、その悪夢を真っ向から打ち消すようなシーンなの。それがまたキモチよかったんだな。「ランボー」という映画の変貌も気になるから今後見ていくつもり。

女性の描き方もすごいよ!メイトリックスは、敵の追跡のために若い女性を人質にして利用するの。ストックホルム症候群って知ってるのかな…敵方の一人の男が彼女にひどいナンパをするのね。その声のかけ方がゲスいのは悪役だからいいとして、その様子を利用してしまうメイトッリクスは明らかにサイコパスなのだが、そうは見えないように描かれているのがすごい。冒頭の「いいパパ」の表情がすごくいいのよ。

そしてバカアクション映画に必要なのは、やっぱり少しイカれた悪役ね。直ぐ挑発に乗るというスキがあるのもいい。あんまり頭よさそうじゃないの。今回はその中米某国から追い出された元独裁者と、メイトリックスの元部下で追放されたことを恨んでるベネット。ベネットは袖無し編み編みベストを着て、首に鎖と錠前のネックレスをしている…すごく、昔のポルノに出てるゲイっぽいのよ。ヒゲもな。

まあとにかく猥雑で暴力的で、反省すべき点も沢山ある80年代バカ映画。でもその猥雑さを「ダメよ!!」と切り捨てていいのか。ポリコレ的にはアウトなんだが、その中に何か独特の魅力があるのは否定できない。私が80年代のものに興奮するのを見て、同時代的に経験してる友達は、私を「遅れて来たオタク」と呼ぶ。遅れて出てきたパヨクでもあるが。

時代からずれてしまってる自分に困ってた時も長かったけど、今は、同時代とは異なる目線を投げかけることが、私の使命のような気がしているわ。

 

 

執筆者・竹美

ほぼカムアウト状態の会社員。九州のパヨクな家庭に育ち、パヨク思想に染まっていることに無自覚なまま二十歳を迎え、周囲の同級生が順当に就職活動を開始した頃、全然やる気になれず焦って大学院へ逃亡。それが、「企業=金儲け=巨悪」だと信仰していたためだと自覚したのはその10年後。「思想転向」のリハビリ過程で、「真っ先に悪を告発する紅衛兵」の素養を小学生位のときに発揮して同級生にウザがられていた記憶もフラッシュバック。

このコーナーでは、映画を通じて「私やあなたというパヨク」の滑稽で哀しく、正しくて誤っている物語を発見していきたい。