Pocket

「変態年増のMixBox」その7

『レザー・フェチ』

残暑お見舞い申し上げます。ほんに連日お暑うございますこと。こんな季節だからこそ、クローゼットの奥から革製の衣類を探り出し、熱中症に陥らない程度にエアコンの温度を高めた室内で、素肌に直接着用に及ぶ、というのはいかがでしょうか。そのクソ暑いこと暑いこと、きっと灼熱地獄の責め苦が、あなたを未知の世界へといざなうことでしょう。

「……想像するだけで全身汗みずくになる文章、この酷暑の夏に、なんの恨みがあって書き散らすかぁ!」とお怒りの方には、とりあえず申し訳ございませんと頭を下げておきます。わたし、腰の低い文章を書くよう努めてはおりますものの、本質はドの字がいくつも付くSの女。ヒトさまのあえぎ苦しむ姿を想像すると、ええもうそれだけで、股間の湿度がいやがうえにも高まってしまう。そんな因業なカラダの、変態年増なのでした。

というわけで、前回の「ロウソクプレイ」が「熱」のほうの熱さなら、今回こそは本物の「暑さ」。無理やり出場させられたガマン大会で大汗噴出させる勢いで、革ジャン&革パン着込んで温度最強にしたコタツにもぐりこみ、七味唐辛子てんこもりのぐらぐらに煮立った鍋焼きうどんでも味わわれながらご笑覧いただければ、と思っております(基本的には冗談ですから、鍋焼きうどん以外は実行なさいませんように)。

なお、本作も例の『Hの革命』(太田出版・のちに徳間文庫)に発表した原稿に、アレンジを施したものです。

▽ ▽ ▽

革製品には不思議な魔力があります。普段は地味でシャイな壁の花キャラで通ってらっしゃる女性も、ビスチェ・肘丈のグローブ・編み上げピンヒールブーツなどのアイテムで全身を黒革で固めたアカツキには、自然とえもいわれぬ威厳が備わり、高々と脚を組んで、下僕にどんな命令を下してやろうかと値踏みする視線で目の前のパートナーを見つめる女性へと、変貌を遂げるはずです。

権力者の地位に憧れて一刻も早く衣装をあつらえたいとするお気持ちは理解できますが、正直いって上質の本革は非常に高価な素材。コルセットひとつに万札の数枚が軽くフッ飛ぶようでは、健気な生活者としての理性が首を縦に振るはずもありません。女王役のコスチュームだけでなく奴隷の首輪や口枷までをも本革にこだわるとすれば、ふたりのカセギをもってしても賄いきれず、世にも珍しいレザー製品収集が原因の自己破産カップル誕生、などという事態に。

そこで革製品の代替品として、比較的お手軽に購入できるラバー素材をお勧めします。ゴムはムレにムレる上べったりと皮膚に絡みつくため、いまどきの季節(2018年の夏場)などは地獄となりますが、奴隷役にはかえってその点が好評。「女王様はレザー、下僕はラバー」と確信的に差をつけることで、おたがいのポジションの色分けがより明確になり、プレイそのものの味わいが増します。

「陛下の衣装に散財しすぎて、ゴム製品といえども奴隷の分まで経費を捻出する余裕がない」場合は、適当な合成皮革か、安っぽいこと極まりないビニール素材の粗悪品でも、あてがっておけばよいでしょう。

レザー製品を身につけたままの出勤というのも、新鮮な感動を約束してくれる体験です。日常的なお堅いスーツの下に装備した、非日常性の象徴ともいえる本革のビスチェやパンツ。自然と気持ちが引き締まり、一挙手一投足にまで威厳がにじみ出て、いつもと違うオーラに包まれたあなたを前にした同僚や上司は、思わず地ベタにひれ伏して敬意を表したい気持ちに、なるかもしれません。

▽ ▽ ▽

みなさま。冗談抜きに熱中症には、くれぐれもお気をつかれますように〜。

(了)

川西由樹子 / 90年代から女性同士の性について赤裸々に表現しているビアン・ライターの草分け。ビアン雑誌「カーミラ」でも主要ライターとして活躍。著書に『Q式サバイバー』など。