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パヨクのための映画批評 61

男子の夢はインドで開く…「マガディーラ 勇者転生」
(”Magadheera”、2009年、インド)

今年最初に観て衝撃を受けた南インド、テルグ語の映画「バーフバリ」。ツイッターでは、バーフバリ王とその兄バラーラデーヴァ王に心酔したファン達の祭りが続いており、私も一時毎日インド映画の動画をYoutubeで観てため息ついてました。嗚呼…今年は色々あって、秋にインドに行こうと思ってました。…人生変えちゃう秋かもね…と思って心待ちにしてたら、仕事の関係で休暇を取れなくなり、しばらく延期。ギギギギと『はだしのゲン』の病人のような呻吟の声を出していたところで、ガス抜きのようなタイミングで来日したインド映画「マガディーラ」を観たわ。「バーフバリ」監督のS.S.ラジャマウリ監督様(ファンの間では創造神と呼ばれる)が8年も前に監督した娯楽映画よ!

400年前、ウダイガル王国のミトラ姫と愛し合っていた伝説の戦士(厨二キター)バライヴァは、姫の従兄弟であるラナデーヴの奸計にはまり、相討ちとなって3人共に命を落とす。バライヴァを看取った男の祈りによって現代のインドによみがえった3人は、それぞれ記憶を取り戻しながら、再び同じ運命に巻き込まれていくゴゴゴゴゴ…

副題、勇者転生ですよ。1990年頃のOVAの副題でしょうか。絶対、配給会社TWIN様の中にあかほりさとるさん原作のラノベやOVAやドラマCDを視聴しまくっていた人がいるのよ(私の場合は全部友達が貸してくれた。どこまでもせこい竹美)。内容も、出てる人がインド人ってだけで、内容はその頃のアニメや漫画が好きだった人は全員落涙するはず…

本作、冒頭からアガるの…ちょっと山水画みたいな場面で、戦士バライヴァとミトラ姫が悲恋の末に命を落とすんだけどもうそこで半泣き(我ながらキモい)。と思ったら突然現代に場面が移って、劇画タッチの夕日の街からバイクに乗ったハルシャ(バライヴァの生まれ変わり)がどっかーーんと画面にいっぱいに飛び込み、静止画になって「RAM CHARAN」と超でかい文字で主演の名前が踊る。この人この時点で映画主演2本目だったのにこの売り出し方。しびれた。やっぱり「バーフバリ」はお行儀よく作ってたんだ。その後はもう、あり得ないシーンの連続。特に冒頭直ぐの波止場でのダンスシーンは意味不明の迫力。

でもさ、前世の記憶がよみがえって愛がよみがえる…とか…あんたいつの時代の映画よ。

そしてどうして私はこんなに感動しているのよ!

厨二的には、「最初から最強」パターンと「途中で最強」パターンがあって、今回は前者だから、女の方が先に男に惚れるよ。「よわっちい男子が転生して強くなる」パターンの同じ監督さんの映画では「マッキー」というのがあります。

「マガディーラ」、「バーフバリ」、「マッキー」を観ると、インド男性の思い込みと独占欲の強さは、日本のソフトヤンキーの1000倍、韓国男の100倍、ラテン男の50倍はあるわね(憶測)。インドは恋愛結婚よりもお見合い結婚の方が多く、「自由恋愛は映画の中のおとぎ話」として消費されてきたことや、南インドでは、映画館まで見に来る客は男性がメインだというような事情があるらしく、インドの娯楽映画に色濃く男子の欲望と夢が反映されているのかもしれない。

とは言え、インドでは、中間層以上の人々が増加し、グローバル化の下で欧米の価値観に触れる機会や、先進国に行ったインド系移民とのコミュニケーションの中で、結婚や恋愛観、好まれる男性の見た目等も変わりつつあるみたい。男女の見た目の変化…欧米化は、ボリウッド映画の中に既に浸透し、波及的に南インドの映画にも影響を与えているそうです。確かに、南インド映画では、「踊るマハラジャ」時代の主演男優の見た目と比べると、21世紀の「バーフバリ」「マガディーラ」の主演男優の見た目は明らかに北方っぽい顔立ちにシフトしている。「マガディーラ」では、主演男優が実の父親(80年代の人気俳優、チランジーヴィ)とダンス対決で共演するのだが、この30年ほどの間の好まれる見た目の変化が顕著に分かるシーンとも言える。

悪役ラナデーヴとその転生した男(ラグヴィール)は、クールだが悪辣な上に嫌な男でねえ…ミトラが転生したインドゥが横を通ったら、その残り香吸い込んでフンガッ!!ってなるようなキモさなの。性欲も強そう。そしてなぜか、現代でもインドの伝統服を愛用なさる。紫だのピンクだの金だの、色鮮やかな服装がキマる(それをハルシャに「舞台俳優ですかぁ?」とイジられてムっとする)。転生前のラナデーヴのときも、意地悪仮面みたいなのつけてたり、バライヴァとの女獲得競争に敗れた後には、わざわざそんな「悪です!」みたいな意地悪カブト被らなくていいのに…その彼が寝返る敵側のシェール・カーン将軍が、またねえ…ガチムチヒゲの容疑者顔で、すごくタイプだったの。主演のラムチャラン王子のことしばらく忘れた。かわいすぎ。砂漠の果てまでも私を連れてって(永遠に懲りない竹美)。

更に面白いのが、サイババが更に突き抜けちゃったみたいな占い師、ゴーラ導師がめちゃくちゃ胡散臭いとこ。明らかに胡散臭いのに、霊験あらたかで周りは真面目に聞き入ってるんですね。笑っちゃう。

世界観としては、JUMPの世界か戦隊ものの世界をもうちょっとロマンチックにしてカレー粉で炒めた感じ。大人向けだから性的なニュアンスは露骨よ。「バーフバリ」がいかに慎み深かったかと思う。直接的な行為は一切描かないものの、特に波止場のダンスシーンは人によっては観てて不愉快かもしれない。あと、もう一つのダンスシーンをカットした監督は賢いと思った。

でも今の時代、ファンは全員Youtubeで全編ノーカットを観ることができるんだけど、それで嫌いになることはないから安心して、監督!

ポリコレ全盛の今、あそこまで「男子のよろこび」を直球で描く映画が日本で上映されて当たった上、やや教養の高い女性ファンを取り込んでいることは特筆すべきことだと思う。

ラムチャラン王子。来日とか次回作待てないから私が絶対に近いうちにインド行くからね♥ 待ってろよ。

 

執筆者・竹美

ほぼカムアウト状態の会社員。九州のパヨクな家庭に育ち、パヨク思想に染まっていることに無自覚なまま二十歳を迎え、周囲の同級生が順当に就職活動を開始した頃、全然やる気になれず焦って大学院へ逃亡。それが、「企業=金儲け=巨悪」だと信仰していたためだと自覚したのはその10年後。「思想転向」のリハビリ過程で、「真っ先に悪を告発する紅衛兵」の素養を小学生位のときに発揮して同級生にウザがられていた記憶もフラッシュバック。

このコーナーでは、映画を通じて「私やあなたというパヨク」の滑稽で哀しく、正しくて誤っている物語を発見していきたい。