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パヨクのための映画批評 83

幸福の鳥の名前はいつも分からない
「彼女がその名を知らない鳥たち」(2017年、日本)

今回の映画は、パヨクと全然関係ないんですけどね、仕事も辞めてヒモ状態で彼氏に養ってもらっている自堕落な蒼井優さんが、電話でクレームを言いまくるシーンから始まるのでこれはただ事ではないってすぐ分かるんだけど、自己中心的な彼女の生き方が何故か他人事とは思われず、引きこまれてしまいました。

同棲相手の陣治の収入で自堕落に生活してる女、十和子は昔の彼氏、黒崎を忘れられずにいた。彼女が腹いせにやってるクレームに対応した百貨店の担当者の水島が、案外いい男だったため直ぐ不倫を始めた十和子は満たされた気分になり、陣治にも優しくなる。そんな時、五年前から元彼の黒崎が失踪していたことが発覚。十和子は、陣治の言動を疑い始める。

前半は、うわー、こんな気持ちのいいこと言う男って大概クズよね!!!あーやっぱり!!!!とやけ酒呑んで溜飲下げて帰る時に「はい、一万円」とか言われて我に返る的な勢い…どんな勢いなのよ…が楽しめたわ。本作はそこに関してはコメディ。以下、信じちゃダメな男の言動ランキング:

①  妻と別れたいんだ…→絶対別れる気が無い

② 仕事で行き詰まっててさ…→数百万円金寄越せ(注記:返す気無し。更に、そんなにお金が無いと言う十和子に対しとんでもないことを持ちかける)

③ 君のために見つけてきた→こいつなら安もん与えても気がつかねえだろという侮り

④ 帰り道に突撃してきた十和子の額にキッスからの、ちょっとだけだよ→暗がりで帰宅前のリフレッシュフェラ(なーんかいいように使われてるよね私っていう顔の十和子)

⑤ バリ、タヒチでのんびり暮らそうと嘘を言う(場所に注目よ!赤道超えてるのが重要みたいなの)

⑥ 一人旅が趣味(注記:既婚なのに趣味が一人旅とかおかしいだろッ!!!!)

⑦ 自分が惨め過ぎて泣き出しちゃった十和子に唐突に口づけをした水島が「こうしないといけないような気がして」。

⑧ 君と僕との美しい思い出⇒いちゃつきをDVDに撮ってるのはいざと言うときに強迫するため(一人称「僕」なハンサム男性は絶対怪しんだ方がよいようです・・・一人称「俺」って言いたくても言えず「僕」と言い、今や「僕」も気持ち悪くて言えない私の僻みだよッ!!)

上記のようなフラグに一切気がつかなかった十和子は愚かだが…こういうことを言って付け入ってくる男性が結構いる、ということを日本の都会に居住する女性はしばしば感じているのかもしれない。彼らの特徴は、十和子のことを人格のある人間だとは思っていないこと。結局必要とされてもいないと知って、とてつもない不満や怒りを溜めることになる。

陣治は十和子の言うことなら何でも聞くし、浮気されようが邪険に扱われようが、それを甘受している。「それでも男なの?男って証明して見せてよ!」とまで侮辱される。会社でもへいこらして情けない男なのだ。ところが、あるとき、電車で十和子にぶつかってきた男をホームに突き飛ばして追い出す。その時の彼の顔ははっきり見えないのだが、彼の正体は見えている通りの男ではないのでは…こいつ…ヤベェやつなんじゃ…キッモい…。でも面白いのが、十和子は陣治のことを疑うものの、恐れてはいないのよね。まさかこんなくず男が大それたことできるはずがないと高をくくっている。

十和子の演技も面白くて、いい男と出会ったら、妙にしおらしくお行儀の良い言葉遣いになり、声も高めの半分ファルセットになる。理不尽な文句をぶつけようと思って張り切ってクレーム電話してたのに、実際に百貨店に行ったら担当者が松坂桃李様だよ!!きれいめの顔だけど、性欲強そうなオスなの!!!素晴らしすぎるキャスティング。そしてそんな放出欲剥き出しのオスの前でフニャァン…とかやったら餌食だよ!!!!直ぐベッドインして「あーって言ってごらん」とか桃李に言われて「ああぁぁぁあんあん」とか言わされるんだけど、もちろん最後は「ああああああ」って泣く羽目に。

#桃李が見えたら終わり。竹美が見えても終わり。

元彼の黒崎を演じた竹野内豊さんも鬼畜ぶりが非常によかった。

陣治の前では関西弁でひどい言葉遣いをするが、彼女が本音を言える男は彼だけなの。陣治の前ではイライラしながらも、無意識的にリラックスできてるのよ。マッサージされながら眠っちゃうんだからどんだけ心許してるんだよ。でもその陣治の正体は…。

十和子は働いて稼いだ金を男に渡してしまう系のダメウーマンで、お友達もいないみたい。だから、理想の彼氏ができたらべったり甘えたいのよね。お姉さんは心配してはいるものの、もはや面倒見切れないわよ。陣治は不器用で、仕事でも失敗だらけの男(でも、十和子を養えているんだから甲斐性あるよアンタ…)。世間から孤立した二人が一緒になり、痛みを以て人のあたたかさを知る…本作は、私の人生ナンバーワン映画、「皆はこう呼んだ「鋼鉄ジーグ」」や、そのモチーフになったと言われるイタリア映画「道」の変奏形ね。陣治は、この脆い幸せを精一杯生きようとする。自堕落な十和子が遂にそれを悟るタイミングが痛ましかった。目の前のことを大事にできないと、幸せにはなれない。でも、「今欲しいもの」はそれじゃないから、我々は時々、十和子のように、本当は大事な相手に無意識に甘えて、八つ当たりしたり腹を立てる。最後の最後まで、十和子は「してもらう」人のまんま。人間は、「いてくれるだけで100%幸せ」と口で言っていても、無意識に「してあげる」と「してもらう」のバランスを探ってしまうもの。何気ない態度が相手を追い詰めていたりするのよ…相手を大事にするってどういうことなのか…本当に分かってるのかどうか…これからが楽しみね竹美さん…

 

執筆者・竹美

ほぼカムアウト状態の会社員。九州のパヨクな家庭に育ち、パヨク思想に染まっていることに無自覚なまま二十歳を迎え、周囲の同級生が順当に就職活動を開始した頃、全然やる気になれず焦って大学院へ逃亡。それが、「企業=金儲け=巨悪」だと信仰していたためだと自覚したのはその10年後。「思想転向」のリハビリ過程で、「真っ先に悪を告発する紅衛兵」の素養を小学生位のときに発揮して同級生にウザがられていた記憶もフラッシュバック。

このコーナーでは、映画を通じて「私やあなたというパヨク」の滑稽で哀しく、正しくて誤っている物語を発見していきたい。