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パヨクのための映画批評 84

中年ラブコメ映画はホラー?
「ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期」
(”Bridget Jones’s Baby”、2016年、アメリカ)

 

今回の映画は、ダメウーマン映画の金字塔「ブリジット・ジョーンズの日記」シリーズから完結編を紹介したいと思います。最初2作も、ブリジットのドジぶりが可愛いけど憎らしくて気が付いたら一緒に泣いてしまいそうな、それなりにぎょっとする映画だったのですが、完結編は…ホラーです。主演のレニー・ゼルウィガーさんの振り切れた在り様が、ご本人の演技の意図と役柄を凌駕しているため、ブリジットが最終的に誰を選ぶのかとか、途中のドタバタなり、男と女の駆け引きなりが、本当に、ぜーんぶ妄想だと思えてくるし正直覚えてない。だが「ありがとう、ブリジット。お互い年取ったね!」という気持ちになった。

マークとダニエルの間で10年近くもふらふらしてしまったブリジットは今や43歳。とは言え仕事は順調で、シングル人生に結構満足している彼女は職場の同僚と一緒にパーティに行き、そこで出会ったアメリカ人のジャックと寝る。その直後、ダニエルの葬儀(あんた…死んでたの!)で元彼のマークと再会、やっぱり直ぐ寝る。その後ブリジットは妊娠していることに気が付くが、はたしてどちらが父親なのか。またしても2人の男の間で揺れるブリジットだった。

内面が成長しないキャリアウーマンでちょっとドジっていう、都会で何とか生き延びてるオバジである私にとってはぎくりとさせられるブリジット。私は最近残業が減って残業代が入らなくなったため、10年働いた正社員でもワーキングプアまっしぐら(社則が勝手に変わっていて退職金は1000円よw)なのだが、ブリジットがあのドジぶりでどうやってロンドンであの生活水準を維持できてるのか知りたい。今回は第1作から10年後という設定を、実際は15年も経た上にボトックス疑惑まで惹起されたレニー・ゼルウィガーが演じるという、悪意でできた完結編なのよ。レニー本人があんまり悪意に気が付いてないというか、大らかと言うか、いつも通りの仕事ぶりで臨むのでほっとする。でも、全盛期の彼女を愛してやまなかっただけに、現在の彼女が出てくるだけでひやひやしちゃう。数年前のオスカー授賞式で久々に「シカゴ」キャストが舞台上に揃ったとき、あなた正直集中してなかったわよね?プレゼンターだったのに、ぼーっとしちゃったから、気が利く共演者のクイーン・ラティファ姐さんがさっと受賞作を読みあげるという一瞬のハプニングをあたしゃ見逃さなかったわよ。その後、日本で久々に知られたニュースは、ボトックス疑惑で「顔…変わった…よね?」と世界のみんながのけぞった件よ。本人は「痩せただけよ」と何食わぬ顔してたけど、いや、あんた…。

でも本作観てびっくり!ちゃんと顔が元に戻っている!女優ってすごいね。

レニーのアンポンタン妄想女っていう持ち味は、彼女のキャリア前期の屋台骨になったわ。彼女の黒歴史映画「テキサス・チェーンソー」(「悪魔のいけにえ」のリメイク)では、殺人鬼一家に拉致される主演女優なんだけど、彼女のほのぼのした空気のおかげでホラー版「ブリジット・ジョーンズの日記」に仕上がっている(一家のイカレた家長を演じ、レニーの顔をべろっと舐めたマニュー・マコノヒーにとっても黒歴史!)。本人はすごい野心家なので色んな役に挑戦したんだけど、「ザ・エージェント」、「ベティ・サイズモア」(これちょっと怖い)、「ふたりの男とひとりの女」、本シリーズでほのぼのパワーをほぼ使い切り、「シカゴ」でオネエ監督によって素顔を引き出され、翌年にオスカーもらった「コールドマウンテン」の農婦役辺りで実力をほぼ全て出し切ってしまった。残念だったわよ…だからどっきり企画みたいな本作への復帰がうれしかった。次回作は確かジュディー・ガーランドの伝記映画。あなたは前に、ジャニス・ジョプリンの伝記映画をやろうとしてたんだよね…でも安定の着地点だと思うわジュディ・ガーランドなら。

英語の原題もすごいよ:ブリジット・ジョーンズの赤ちゃん。要するに「ローズマリーの赤ちゃん」パロディだからホラーコメディーなのは間違いない。まずもって、43歳になっても、酔って知らない男とそのまんま寝てしまうブリジットの焼け野が原ぶり…人のこと全く言えないなと思いました。実はブリジット、それなりにモテる女なの。仕事も調子がよいし、家族とも仲が良く、いつも会える友達もいる。幸せ者なのだ。友達もみんな子供がいて(特にゲイの友達にまで子供がいるっていうね)、自分だけ一人っていう中で遂に妊娠したんだけど、元々「婚期逃した」だの「シングルでいいのか」だのという焦りとか劣等感ゼロなのがいい。それでも、パート1の頃はうっすら気にしてたんだけど、時代の変化かしらね。

さらに、シングルの母親になることへのためらいが全然表現されないのは注目よ。日本映画だったら、「シングルの仕事ばりばりやってる女性」の妊娠という状況を前に「育児どうしよう」「仕事どうしよう」「クソッ男は全然手伝わねえしよ」という側面が出てくると思うんだわ。でもね、EU勝ち組国の首都、ロンドンのキャリアウーマンはそうじゃない。ジャックもマークも、自分の初めての子供だと信じたいので、ブリジットのマタニティ教室に二人で通う。「二人とも父親です」と言って、「ゲイカップルの子供を産む代理母」という誤解を普通に受け止めている。これは同性婚が合法且つ「普通になった」社会の在り様なのだと思う。もちろん、子供を持つということが経済的余裕がなせるわざであることも示唆されている。この様子を皆、目に焼き付けておくの…そして、同性婚するにせよ、子を産むにせよ、「ゴッズ・オウン・カントリー」のゲオルゲ様のように、ロンドンを目指せばいいってことね…びゅおおおお…イギリスは遠いわ。

本作似たような映画としては、30代キャリアあり・男無しの女の勘違い暴走と空虚を描いた米国映画「ヤング≒アダルト」があるんだけど…あの映画は毒が強すぎて、笑いながらも一人で眠っていると寒さが襲ってくるの…それに比べたら、本作はホラーコメディだけど基本的に人に優しいから、みんなも疲れたときに観てね。でもね、パート2までは「こんなあたしでもこの子よりはいいわw」と観れていたのが、「何かしゃれにならないわ…私もあんたもゴゴゴゴゴ」と焼け野が原になるかもしれないから、恋愛コメディ映画は全く油断ならないの。

 

執筆者・竹美

ほぼカムアウト状態の会社員。九州のパヨクな家庭に育ち、パヨク思想に染まっていることに無自覚なまま二十歳を迎え、周囲の同級生が順当に就職活動を開始した頃、全然やる気になれず焦って大学院へ逃亡。それが、「企業=金儲け=巨悪」だと信仰していたためだと自覚したのはその10年後。「思想転向」のリハビリ過程で、「真っ先に悪を告発する紅衛兵」の素養を小学生位のときに発揮して同級生にウザがられていた記憶もフラッシュバック。

このコーナーでは、映画を通じて「私やあなたというパヨク」の滑稽で哀しく、正しくて誤っている物語を発見していきたい。